2002 MARCH vol.69
──では「女子ハンディキャップシステム」の導入の目的というのは?
里井 はい。いま申し上げたコースレートシステムが、ハンディキャップシステムに反映されるのですが、わが国の場合、長年にわたり男女同一のコースレートシステムに基づいて、ハンディキャップが決められていました。しかし、世界各国では古くから男子と女子の身体的能力の差を反映したコースレートに基づいてハンディキャップが定められており、ゴルフ本来の目的である「誰もが平等に楽しめる」というテーマにのっとって運営されています。

今後、ますますゴルフを通じて世界各国とのかかわりが深くなっていく過程で、ゴルフ環境の整備、発展を考えると男女共に世界の基準にマッチしたシステムを持つことが重要になります。そこで平成2年から当ハンディキャップ委員会で議論を繰り返し、今回、「女子コースレートの算出法」を決定し、女子ハンディキャップシステムの導入を決定した次第です。
──現行のシステムで、具体的な不具合というものはあったのでしょうか。
里井 いくつかありますが、そのうちのひとつとして、国際ハンディキャップが挙げられるでしょう。日本人が海外でプレーする際に必要なものです。

各地区連盟から申請があった場合、JGAが証明書を発行しますが、男性は全く問題ありません。そのままのハンディキャップで認定されます。しかし女性の場合、男性と同じコースレート基準で算出したハンディキャップでは基準ベースが異なるため、各国のそれと格差が生じています。ですから、苦肉の策としてハンディキャップ換算表なるものを作成し、申請があった場合、たとえばHC20の方なら3〜4下げて認定していました。いわば「机上の修正」をしていたことになります。これは非常に不自然なことですから早急に見直して、改正していく必要があったわけです。
諸戸 付け加えさせていただくと、国内のプレーに関しても、ヤーデージに対する男女の体力的な格差があります。例えば男子の日本オープンでは6900〜7100ヤードで競われており、女子の日本オープンでは6300〜6400ヤードで行われております。また、女性が6500ヤードのコースでプレーするとしたら、男性の7500ヤード以上に相当するでしょう。これでは、打てども打てども果てしない道のりです。辛いばかりでゴルフの楽しさが実感できません。

各倶楽部の月例競技に置き換えれば、現状のコースレートシステムでは、男女同一のティマークでないと競技が成立しないのです。それが理由で、女性が月例競技に参加できないという倶楽部もある。

今回女子のハンディキャップシステムが制定されたことで、男女別々のハンディキャップが算出できるようになります。今回の改定で、女性がゴルフを楽しめる環境が一歩も二歩も前進すると確信しています。
──大枠で捉えれば日本のゴルフ界のシステムが向上する引き金となったわけですね。
里井 そのとおりです。数あるスポーツ種目の中で、老若男女が平等にプレーすることができるのはゴルフだけです。これからのゴルフ界をさらに発展させるためには、その根幹にあるハンディキャップシステムの整備は欠かせません。どこでも誰とでも平等に競い合える、というハンディキャップ本来の意義を考えれば「女子ハンディキャップシステム」の導入はごく自然なことなのです。

さらに当委員会ではJGAハンディキャップの一層の普及を促進し、全国統一システムでの運営を念頭にいれています。日本のゴルフ界の環境整備に今後も微力ながら力を注いでいきたいと考えています。
──我々も期待しています。ありがとうございました。


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