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「ゴルフと私」 |
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笠折 瑠実 堀越高校3年 |
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小学生五年生の時、素人の父に連れられて初めてゴルフ練習場に行きました。周りの大人達が打ち放つボールがはるか遠くのネットに突き刺さるのを見て、幼いながら感動を覚えました。私も真似をしようとしましたが、逆に重たいクラブに振り回されてしまい、ボールを飛ばすどころではありませんでした。そんな私の姿を見て、父は黙ってただニヤニヤと笑って見ているだけでした。それが悔しくて、それ以来毎日練習場に連れて行ってもらうようになりました。
私の家は、ゴルフをするような裕福な家庭ではなく両親共働きの普通の家庭です。ホームコースなど持てるはずもなく、月に一回コースに出るのが精一杯で、本当に地味な練習でした。小学生部門の試合に出たのは、一度だけで、結果は惨憺たる物でしたが、中学に入学してからは、少しずつ試合に出られるようになりました。コースまでは、毎回自分でクラブを担ぎ、電車に乗って移動していました。満足の行く成績は残せませんでしたが、試合のたびに必ず父が応援にきてくれました。
堀越高校の入学は、それまで自力でゴルフをしていた私にとってとても大きな転機です。私のために、学校の先生や友人や家族がいろいろなところで支えてくれました。放課後は練習場に行き、ハーフラウンドとパター練習を終え、家に帰るのは22時を過ぎるという生活が続きましたが、この本格的なコース練習をすることによりスコア面で急成長することができたのです。
高校生活最後の東那須での全国大会最終日。その頃父は病気がちでしたが、「どうしても応援にいく」と母と一緒に駆けつけてくれました。午前中は44の大叩き。とてもショックでした。午後のスタートで、ふと後ろを振り返ると父が優しい笑顔で見守ってくれていました。その笑顔を見たとたん、大粒の涙があふれてしまいました。すぐに向き直り平常心を取り戻し、懸命にプレーを続けました。いつもどおりにやれば
いいのだと肩の力が抜けたのか、ハーフラウンドベストスコアーの1アンダーで終えることができました。私にとって初めての経験でした。
「いくつ叩いてもいいよ。でもスコアーだけは絶対にごまかすなよ。」これが父の口癖です。私のプレーを見ながら、きっと父も手が震えるほどの緊張感や、不安、悔しい思いや喜びなどを私と同じように感じていてくれたのではないでしょうか。
私の卒業を間近に控えた今年の一月、父は病気で亡くなりました。今思えば、最後の試合は最高のプレゼントになったと思います。
素人の父から学んだことはたくさんあります。父はゴルファーである前に一人の人間として成長することをいつも願っていました。父とともに戦ったこの七年間は私にとって生涯忘れることのできないかけがえのない時間です。
ゴルフを通して多くの人と出会い、さまざまな体験をしました。
「いつかきっとプロになる!」幼い頃に父と語った大きな夢をこれからも大切にしていきたいと思います。 |
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