世界一の激戦プロツアー、米国ツアーでよくいわれる言葉に”ムービング・デー”というのがある。第3ラウンドは予選を無事に通過した決勝ラウンドの始まりなので全選手が攻めに転じ、少しでも上位を目指す。もちろん首位グループの選手もさらにスコアを伸ばそうとする。そこで、第3ラウンドは”ムービング・デー”(動き出す日)と呼ばれるわけだ。
小春日和の絶好なコンディションに恵まれた3日目、そんな典型的”ムービング・デー”となったが、首位で迎えたテリー・ゲールがスコアを落とし、かわって友利勝良、陳志明、須藤聡明が急浮上して、はっきり明暗が分かれた。
ゲールと最終組でプレーした友利はティショットはフェアウ
ェーをキープ、アイアンの距離感が抜群で、ノーボギー、4バーディーの4アンダーパー68をマーク、一気に首位に。ゲールがショットを曲げ、ラフからの2打目の距離感に苦しむ中、余裕のゴルフで最終ラウンドを迎えることになった。
「昨日までと違って、グリーンがそれほど堅くなく、ボールがグリーン上で止まってくれることが途中で分かったので、ピンをデッドに狙えました。スタート直後の1番グリーンで、3パットの危機をパーでしのげたことも大きい意味がありました」とプレー後に語った。
小さいグリーン、スティンプメーターで10フィート近いスピードのグリーンに仕上がったので、ローラーをかけて堅くする作業を競技委員が中止したことを、友利は見抜いていたのだ。
圧巻はゲームの中盤だった。パー行進で迎えた9番ホール(パー5)で、この日初のバーディーパットをねじ込むと、インに入って10番も4mのフックラインを入れる。ここで、ボギーを叩いたゲールを捉まえ5アンダーパーで並び、続く11番(パー3)でもピン右4mに8番アイアンでつけると、この大きく左に切れるフックラインを読みきって沈めたのだ。アッという間の逆転劇だった。
世界を股に稼ぐ”渡り鳥プロ”ゲールは大会側が認めている帯同キャディではなく、ハウスキャディを利用している。言葉が通じないせいかコミュニケーションは一切ない。おまけに入らないパットに苦渋の表情だし、次第にナーバスになって行くのが誰の目にも明らかだった。それでも、1オーバーでトータル4アンダーパーの4位タイだから、明日の開き直ったプレーに期待がかかる。
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