胸のすく宮里の追い上げは、スタートの1番から始まった。5番アイアンのショットを1メートルにつけるバーディー。アウトを2アンダーパーで折り返し、11、12番で連続バーディー。15番ではフェアウェーバンカーから6番アイアンでグリーンを捉えると、7メートルをまん中からねじ込んで完全に流れをつかんだ。
宮里がスタートする正午前の観衆が10,755人。第3ラウンドの観客動員数は15,072人と最多を記録し、コースは異様な盛り上がりを見せた。その観客の多くが取り囲んだ最終18番、宮里はピン上4メートルの下りのフックラインのバーディーパットをねじ込んでガッツポーズを決め、さらに熱気をあおった。終始、コ
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ースは宮里一色だった。
首位に8打差もあった絶体絶命のピンチを3ストローク差まで縮めた。陣営は背水の陣で臨んでいた。コーチの父・優さんと、下半身が流れ、ショットのぶれた前日を反省。スタート前にウィークポイント解消に努めた。パットの握りを修正する冒険も試みた。「勝つために68は欲しい」(優さん)。やれることはすべてやったのだ。
宮里は、それに見事に応えた。最終ラウンドが雨の予報ときくと「スコアを伸ばせるのは、今日しかない」と強い気持ちに切り替えた。明日、コンデションが変わればスコアは伸びない、という読みだ。強い気持ちになれたことも好スコアを引き出す要因につながっていたはずだ。
「きょうはアイアンショットの距離感が合った。ピンに絡んでリズムが良くなり、バーディーパットもよく入ってくれました」
4つのパー5で3バーディー。「ティーショットがパー5でよく飛んだ。良い集中力、良いイメージで攻めることができた結果ですね」ちょっと、得意そうに鼻先が動いた。
2連覇を目指す今回は、昨年とまったく違う展開となった。3ラウンドを終え6打をつけた昨年。しかし、今回は3打のリードを追う逆の立場だ。しかも相手は全英女子オープンに勝ち、今季米ツアーで1勝の手強い相手のJeong Jang(張晶、チャン・チョン)。
「追いかけようと思うより、自分の世界でプレーすることを心がけます。追いかけようとすれば、自分を苦しめる。自分のプレーに集中したい」最終ラウンドを冷静に見つめる。
強豪・Jeong Jang(張晶、チャン・チュン)についても、淡々と語った。「相手がJJ(張のニックネーム)というシチュエーション(状況)に運を感じる。だって、初めて一緒の組でラウンドするんです。良い経験になります」
今回だけでなく来年、再来年、さらにその先、ライバルとして戦わなければならない相手と決め力まず、しかし「ドゥー・マイ・ベスト」世界メジャー優勝をにらんだ宮里の最終ラウンドは濃い内容の1日となるはずだ。
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