アテストを終えた田中の表情は、今日の太陽のようなまぶしい笑顔に包まれていた。早朝にコースを包み込んだ霧は、昨日の比ではなく、競技開始時間を1時間20分遅らせる措置がとられたほど。日が昇るにつれ、霧も嘘のように晴れて気温も上がり、半袖でプレーをする選手も見られる好コンディションとなった。しかし、小野ゴルフ倶楽部を攻略するのは生半可なことではない。
出場選手111人中、この日アンダーパーをマークしたのは、田中だけ。厳しいホールロケーションがスコアメイクを難しくさせる中、「確かにホールの位置が難しいホールもありました。でも、手前から攻めて、上りのパットを残すようにすれば、パーセーブは容易い」と
いう言葉通り、田中は、悠々とこのコースを攻略して見せた。スタートの10番でいきなり5メートルを決めると、14番ではホール手前2メートルのバーディーチャンスを沈める。15番は、2段グリーンの上からとなる15メートルのバーディーチャンスを3パットのボギーとしたが、その後は、正確なショットと好調なパッティングでパーを積み重ね、前半は35。第1ラウンドで40を叩いたアウトコース。
「今日は、上手に回ろうと思った」という田中は、1番でティショットを右の林に入れてボギーを叩くミスはあったものの5番で2メートルのフックラインを見事に沈めて、パープレー。今日のラウンドを3バーディー・2ボギーの71でホールアウトし、通算イーブンパーで2位に1打差ながら、単独首位に立った。「今日のゴルフは、ティショットも真っ直ぐ打てて、殆どフェアウェイ。パットもタッチが合っていて、チャンスは全部カップインしそうだった」笑顔の理由は、単独首位に立ったことより、今日のプレーに満足したものから。
昨年大会を制してから、自信をつけた田中は、関西月例で常に上位をキープし続けている他、関西ミッドアマも優勝。いまや手がつけられないほど、好調だ。大会連覇に大きく前進したが、「自分は追いかける方が得意。逃げ切り優勝の経験はないかも知れない」と、一抹の不安も見せ、「明日も71を目標にする。悪くてもイーブンパーにまとめたい。それで負けたら仕方がない」と、両肩にかかる期待をはぐらかす。明日の天気も晴れが予想される。今日のような笑顔で18番グリーンを終えられたとき、田村尚之以来2人目となる大会連覇の偉業が達成される。
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