前半、最終ラウンドを牽引したのは1打差2位でスタートした高橋雅也だった。緊張のためか、スタートの1番ホールでティショットを右に曲げた高橋だったが、パーセーブで危機を乗り切る。高橋にとって鬼門の2番でボギーとした高橋だったが、次のホールから快進撃が始まった。3番グリーン上。ピン奥から下り5メートルのチャンスは、「正直ラインは読めなかった。真っ直ぐ強めにヒットするだけだった」が、球はカップの反対側の土手にあたり、ホールに消えた。このバーディーで波に乗った高橋は、自身が課題としていた練習と同じスウィングが出来はじめたのか、第1ラウンド前半を思わせる好調なショットを見せる。6番をバーディーとすると、続
く7番でも下り傾斜のスライスしてホールの直前でフックするスネークラインをねじ込み連続バーディー。前半を34でホールアウトし、スコアを崩した田中を逆転。地道にパーセーブを続け、通算3オーバーパーで2位に浮上した同組の寺西に4打差をつける通算1アンダーパーまでスコアを伸ばし、前半を終えて単独首位に立った。埼玉栄高校卒業後、一時はプロゴルファーも目指していた高橋が、このまま逃げ切れるかと思われた後半。思いもよらない波乱が高橋を待っていた。10番でティショットを曲げた高橋は、必死に3オンを果たす。残すは、1メートルのパーパット。慎重にラインを読んだ高橋だったが、これを外しボギーを叩いてしまう。この1メートル足らずのパーパットを外した時、高橋の指の間から初優勝がすり抜けていった。12番から3連続ボギー。15番でダブルボギー、上がり2ホールも連続ボギーと地滑りを起こしたかのようにスコアを崩し、44。最終ラウンドは、3バーディー・7ボギー・1ダブルボギー78に終わった。「優勝を意識しないようにと思っていたけれど…やっぱり意識してしまったのかも。後半は疲れで下半身もぶれていたし…」と唇を噛む。それでも、「優勝争いというしびれる環境に最後まで身をおけたことは、良い経験になった。苦しかったけれど、3日間とても楽しめた」と気丈に語った。
ベテランの言葉は、重い。「パープレーなら良い勝負が出来る」と語っていた寺西明の予想通り、優勝スコアは寺西の最終ラウンドスタート時のスコアと同じ3オーバーパーだった。同じ関西地区の田中との最終組。寺西は、緊張感溢れる中にも時折笑顔を覗かせる余裕を見せていた。前半は、スコアを落とす田中、一気にバーディー攻勢をかけた高橋を横目に、スコアカード通りのパープレー。幾度かのチャンスはあったが、有言実行という言葉が思い浮かぶ愚直なプレー振りだった。後半、10番で高橋がボギーを叩き、この日初めてのオナーとなった11番。「流れが変わった」と感じた寺西は、5メートルのバーディーパットを沈め、首位をいく高橋にプレッシャーをかける。しかし、直後の12番でボギーを叩くとその後、17番までに4つのボギーを打ってしまう。緊張の糸が切れたのか、最終18番をトリプルボギーとしてしまった寺西は、通算9オーバーパーで地元開催のミッドアマを終えた。「最後にスコアを崩したけれど、この結果には満足している。目標としていた来年のシードも獲れたし」ベテランは、最後まで泰然自若だった。
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