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競技報告
【高橋雅也は圧倒的な強さを見せてリベンジを果たす】
第3日 競技報告:JGA 写真:JGA
圧倒的な強さだった。1打差で後を追う飯田の影も気にせずに、自分の世界に入ったかのようなプレー振りが印象的だった高橋雅也。その強さは、他の追随を許さなかった。217ヤードの打ちおろしのパー3の2番ホール。オナーの高橋は「4番アイアンで届く距離だったけれど、アゲインストの風だったので」ティインググラウンドで3番アイアンを手にする。このショットが「完璧な手ごたえ」という会心の当たりでピン右1メートルにつく。これを難なく沈めた高橋は、昨日まで不調だったドライバーショットも「昨夜、球を捕まえに行き過ぎて、身体が突っ込んでいた。それをクローズ気味にアドレスしてみた」という、ひらめきで距離も方向性も復調。

5番ホールでティショットを右の林に打ち込み、OBまで1メートルというピンチも「あのショットは手ごたえは完璧。自分の中ではミスとは思っていない」と、冷静に対応し、パーをセーブする。続く6番ではセカンドショットをミスしてホールまで14メートルのバーディーパットを残したが、見事にこれを沈め、8番では2メートルを決め、前半で3ストロークスコアを伸ばした。「今日は、本当に落ち着いてプレーが出来た」という高橋の言葉通り、後半も鬼門の10番、11番でパーセーブすると12番で100ヤードのセカンドショットをピッチングサンドで30センチ、続く13番も残り220ヤードの2打目を4番アイアンで2オン。らくらくと連続バーディーを決め、この時点で9アンダーパーまでスコアを伸ばすと、飯田が同じ13番でダブルボギーを叩きスコアを落とし、優勝をほぼ決定づけた。

しかし、ゴルフの神様は、高橋に試練を与える。14番パー3でティショットを木に当てて池に落とすミスでダブルボギーを叩くと、続く15番も3パットでボギー。2ホールで3ストロークもスコアを崩す。「正直、あの2ホールを終わった時点では、昨年のことが思い出された」と苦笑いする高橋。昨年は、前半でスコアを伸ばし、初優勝をほぼ手中に収めたかと思われた後半に44と自滅して2位に甘んじた。本年の会場、小倉カンツリー倶楽部の16番から最終ホールまでは、ひとつのミスがダブルボギーにつながる大難関。これを前に、悪夢がよみがえるのも当然かもしれない。しかし、今年の高橋は違った。昨年、小野ゴルフ倶楽部から神戸に移動する車中で「頭の中で、小野ゴルフ倶楽部を何度も何度もプレーしなおしてみた。何故あのホールであんなミスをしたのか…こうやればよかったという思いがぬぐいきれなかった」という悔しさをバネに今年は、「入れ込まないプレー。心に余裕を持って、セルフコントロールする」ことを目標に、ここまで戦ってきた。その思いを胸に16番を迎えた高橋のティショットは確実にグリーンオン。このホールでパーセーブすると、上がり2ホールもパー。終わってみれば、この日70とスコアを伸ばして、自身初めての全国大会の優勝杯を手中に収めた。

他人からみれば、今日までの高橋のゴルフ人生は、遠回りと映るかもしれない。順風満帆とはいいがたい。いや、波乱万丈といった方が相応しいかもしれない。高校卒業後にプロゴルファーを目指して、研修生になるが、プロテストの受験に何度となく失敗。夢を諦め、アマチュアに復帰したものの、昨年の日本ミッドアマでは、逆転負け。今年も関東ミッドアマで2位に終わるなど苦汁を味わってきた。

プロのようにバーディーを積極的に狙うプレーから、パープレーを目標にスコアを作っていくプレーへの意識改革は、ここ数年でようやっと身についてきた。「自分は、負け組みだと思っているんです。あのときの仲間は、プロゴルファーになって活躍している人もいる。自分は夢を諦めた人間」だが、今までの道程に後悔はない。「プロゴルファーとして活躍できる期間は、短いと思う。でもアマチュアなら、仕事と両立する難しさはあるけれど、いつまでも競技ゴルフを楽しめる。充実した生活おくれること、アマチュアとして競技に出場できる現在が幸せなんだ」と素直に思える。

高橋は、ミッドアマ優勝で来年の日本オープン出場資格を得た。来年の会場は高橋の地元埼玉県の武蔵カントリークラブ・豊岡コース。普段は仕事場として足を運んでいるゴルフ場に、競技者として初めて足を踏み入れる。「プロが出場する競技に出場するのは、初めてになる。それが日本オープンで、しかも地元。夢のようです」と目を輝かせる。夢を諦めた男。しかし、夢の舞台が来年の高橋を待っている。


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