優勝候補の筆頭に挙げられている藤本は、不安いっぱいの日本女子アマ・ウィークを迎えていた。
「サントリーレディスの試合中、突然、自分のリズムでスウィングできなくなってしまって…。日本アマを迎えるまでになんとか立ち直りたくて練習しましたが、ショットがバラバラのまま月曜日の練習ラウンドまできてしまいました。で、その練習ラウンドも、やっぱり自分のスウィングができず、スコアもまとまりませんでした。ラウンド後にドライビングレンジに飛び込みました。150球ぐらい打ちました。考えられることは、全てチェックしようと、本当に大慌ての最終確認です。そしたら、1球だけ、自分のリズムで打てたのです。“これだ!”っ
て、閃きました。具体的にどこの部分をチェックしたときですか? 右ヒザでした。バックスウィングで、動いているのじゃないかと思って、そこを動かさないように意識したら、突然蘇ったのです。第1日のスタート前に、改めてそこを意識しながらショット練習したら、いいリズムで打てました」
11時27分。アウトからのスタート。第1打が、フェアウェイをとらえた。第2打は、グリーンをとらえた。そして7メートルのバーディパットがカップに沈んだ。
「あれで、月曜日の1球で閃いたことが間違いなかったと、自信も取り戻せました。間に合った! そんな感じです」
4番でアプローチショットを2メートル強カップオーバーさせた。距離は短かったが、下りの微妙なラインが残ってしまった。これをはずしてボギーにしたが、「ミスしたと自覚があるのは、このホールだけだったと思います」。16、17番とアイアンショットも冴えて連続バーディ。14番からは5ホール連続1パットと、パッティングのタッチも合っていた。
8月にはプロテストを控えている藤本にとって、これが最後の日本女子アマ。
「正直に言います。毎年、優勝を狙っていました。今回も狙っています。でも、優勝より、もっと強い思いが、今、湧き上がってきています。それは、アマチュアの締めくくりとして、悔いのないゴルフをし尽くそうという気持です。そういうゴルフができるのではないか。練習の1球で取り戻せた自分のリズムが、そういう思いにさせてくれたのだと思います」
大会直前で不安から開放された藤本には、残る死角も見当たらない。
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