コースの中にいる選手は、4人。
決勝進出の宇佐美祐樹(鷹)と伊藤誠道(湘洋中学)。そして3位決定戦の川村昌弘(福井工業大学附属福井高校)と久我悠太郎(新白河)。
彼ら4人だけが、フェアウェイで熱戦を繰り広げていた。
5日間という長い戦い。予選36ホールのストロークプレーでは、時折の豪雨も入り混じった雨に見舞われた。試合が進むにつれ、選手たちが、コースを去っていく。荷造りをして帰り去る選手たちの表情は、悔しさを隠せない。
そんな敗れ去った142名の選手たちの想いを背負って、ふたつのマッチが繰り広げられた。
決勝は、36ホール・マッチプレー。午前8時にスタートした宇佐美VS伊藤。準決
勝までの戦いと違って、ふたりの表情に、より緊張感が漂っていた。
それは、マッチの展開にも表われていた。機先を制するタイプのふたりが、1、2番と獲れずにオールスクウェア。「いつも出だしで荒れるゴルフなので、今日は、まずまずのスタートだなと思った」伊藤の気持ちとは裏腹に、3番ホール、パー3で宇佐美が1up。
その後、6ホール、まるで空気が沈殿しているように動かない。伊藤は、持ち前のアイアンの切れ味が出せず、宇佐美は、惜しい距離のパッティングが入らずに苦しむ。第94回という歴史を持つ日本アマチュア選手権。過去の決勝マッチで、楽に勝った選手は一人もいないはずだ。
いま、世代が変わっても、その重さを感じない選手はいないはずだ。ただ、10代の前半、20代の前半と世代が若返っただけである。
「やっぱり決勝(の緊張感)は違うな。それにしても、宇佐美先輩は凄い」と伊藤は感じた。
まるで真空状態の9ホールをターンして10番ホール、パー4で宇佐美が獲り2up。11番、パー5で伊藤が、奪い返して再び宇佐美の1upのまま3ホール、分けて迎えた15番、パー3。ようやく宇佐美がとり2up。さらに16、18番と宇佐美がとって、前半の18ホールは、宇佐美4upで、30分インターバルのあと、後半の18ホールに向かった。
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