ゲームは、むしろ柏原明日架(宮崎大淀CC)が主導権を握る流れで進んでいた。18ホールを終えてオールスクエアではあったが、リードしては追いつかれる展開でも、相手の酒井には一度もリードを許さなかった。後半も、その流れは続いていた。19ホール目で1アップ。オールスクエアに戻された22ホール目の直後にまた1アップ。そして28ホール目に2アップとしたときには、史上最年少優勝か、と思わせたものだった。
だが、このとき、柏原の体は悲鳴をあげ始めていた。下半身が動かなくなり、ショットが引っ掛かる。上りのホールでは、打ち終わったクラブを杖代わりにするシーンもあった。絶対有利かと思われた2アップ直後から、立
て続けに酒井にホールを奪われていく。フェアウェイのベストポジションから得意のサンドウェッジでグリーン手前バンカーに落としたり(30ホール目)、左ラフからのショットをトップさせて30ヤードしか前進させられなかったり(32ホール目)、信じられないミスが続いた。このスキをつかれて酒井に追いつかれ、さらに一気に追い抜かれてしまった。
ドーミーホールとなった35ホール目。柏原は昨年よりも成長した面のひとつにあげていた「諦めない心ができた」をプレーにつなげていった。わずかに残ったエネルギーを振りしぼり、フェアウェイ、グリーンをとらえてこのホールを取り返し、1ダウンでパー5の36ホール目に持ち込んだ。そのドライバーショットも酒井を大きくアウトドライブした。酒井の2打目はグリーンに届かない距離で、手前に30ヤードほど。柏原は、果敢にグリーンを狙った。花道に落ちたボールは、グリーンを転がって奥にオーバーしてしまった。
そして、アプローチショット合戦の格好になり、酒井が30センチに。柏原は、もう奥からの3打目を入れるしかない。狙った。フワリと上がったボールはゴリーンに落下したあと、カップに向かって転がりはじめた。ラインに乗っている。あわや…。カップ横をかすめて通り抜けていった。お互いにバーディーパットを沈めて、勝負がついた。
「36ホールまで戦えたことには、満足しています。諦めない心は大きく育っていたのを実感できました。でも、体のスタミナは、自分の心のスタミナほどタフではありませんでした。もっとトレーニングする必要性を感じさせられました」
中学3年生でランナーアップ。「勝負だから、やっぱり負けるのは口惜しい。でも、今年の目標は、日本ジュニア(12~14歳の部)の優勝でしたから、そちらに気持ちを切り替えていきます」
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