首位の藤本とは5打差。「藤本選手は、実績もものすごいし、技術も高い」自分との実力の差を認めながら、櫻井は母親の言葉を思い返していた。「自分は運が強いと念じていなさい。自信をもっと持ちなさい。そう信じていれば、願いは叶うの」櫻井は、スタートの1番でボギーを叩くと、「あのボギーで開き直れた」という。しかし、3番(パー5)で藤本との差は7打に広がる。
櫻井は4番で3メートルのバーディを決めるも、焼け石に水のように思えた。しかし、ここから櫻井の快進撃が始まる。7番(パー5)。グリーン手前20ヤードのアプローチを8番アイアンで打つと、これが直接カップイン。「これが始まりで、全てだった」チップインイ
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ーグルを奪うと、勝負の流れが変わる。藤本が不調から前半で2つスコアを落として、2人の差は1ストロークに縮まった。
そして後半。自分の「運」を信じてプレーを続けた櫻井は、15番までに1ストロークスコアを伸ばすと16番で3メートルを沈めて藤本に並ぶ。そして、17番では5メートルの下りフックラインを読みきった櫻井が連続バーディを奪ったのに対して、藤本がよもやの3パットのミスでついに藤本を逆転して初めて2打のリードを奪ったのだ。最終ホール。グリーン奥からのアプローチを「ホールまでの下り傾斜がきつくて、ロブショットも一瞬考えたけれど、ボギーでも構わないから上りのパットを打とうと」いう冷静な判断をみせた。このアプローチは、グリーンを少しオーバーしたが、これは櫻井の想定の内。きっちりとボギーでホールアウトし、見事な逆転劇を演じた。
「前半、藤本選手のスコアはあまりよくないことはわかりましたが、彼なら後半は必ず立て直してくると思っていた。それでも、母の言葉を信じて、日頃から自分は運が強いと思っていることが大事なんですね」と不思議そうな表情を見せた。しかし、櫻井は精神論だけで戴冠を果たしたわけではない。杉並学院高校3年生の7月にアメリカに3ヵ月半留学。ここで、「ゴルフに対する考え方、スウィングメソッドなど全てが新鮮で。短い米国での暮らしでしたが、すごく勉強になったし、スウィングも直された」という。自分のゴルフを成長させるための努力の上に、「自分を信じる」心も培ってきた。
日本学生優勝で10月の日本オープンの出場資格も得た。「高校、大学の先輩でもある薗田峻輔プロと、高校の後輩の石川遼プロ。ようやく彼らと同じステージで真剣勝負が出来る。すごく楽しみ」櫻井は、母の言葉を信じて、日本オープンに向けて練習を積む。
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