大堀薫(大阪学院大学3年)は、「緊張して朝ごはんは食べられなかった」と苦笑いを見せる。4月に連盟杯を制してはいるが、「ジュニアのときも全然ダメで。2日間とも90ストロークぐらい叩いて、第2ラウンドでカットでした」と、全国大会で優勝争いを殆ど経験したことがないのだから、ご飯が喉を通らないのも無理はない。
スタート前の大堀は、股関節と肩甲骨のストレッチを繰り返して、2度3度とジャンプをし、必死に緊張をほぐそうとしているように見えた。そんな大堀に幸運だったのは、「最終組でプレーした2人も地元の大学で。スタートしたらリラックスできた」。スタートの1番。95ヤードのセカンドショットをピッチングウェ
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ッジで1メートルにつけてバーディ。後を追う二人の機先を制するスタートダッシュを決める。しかし、2番で山本有里(大手前大学3年)がバーディを奪い返し、最少リードは変わらない。5番でバーディを奪うも6番では2打目を「入れてしまったらボギーは覚悟している。苦手だから」というバンカーに打ち込み、3番に続いての3パットでダブルボギー
。一時3ストロークまで開いていた山本との差は再び最少ストローク差になってしまった。7番(パー3)では山本が見事なティショットで1メートルにつけてバーディ。このホールで二人が通算2オーバーパーで並んだ。山本が流れをつかんだと思われた8番(パー5)で2打目をOBとし4パットの9を叩いて自滅すると、大堀は9番で尾根を越えてスライスする12メートルのパットをねじ込みバーディ。「自然と出てしまった」というガッツポーズが、喜びの大きさを感じさせた。
優勝争いは、10番で連続バーディとした大堀の独走態勢と思われたが、初優勝までの道のりは険しかった。11番で再び不得意なバンカーに打ち込みこの日2つ目のダブルボギーを叩くと13番でボギー。15番では12メートルのバーディを決めながら、16番では三度バンカーをミスしてボギー。17番でもグリーン上でペナルティを取られて、この日3つ目のダブルボギー。「後半はしびれていることは自覚していなかったけれど、ドタバタしてしまった」と反省するように、最終18番もグリーン右からのバンカーショットを寄せきれずボギーとする大荒れのプレー。優勝を決める短いボギーパットも「同組の選手のスコアの出入りも激しくて、自分がリードしているのかわからなかった」と、お先に入れてしまった。あっけなく最後のパットを沈めても、優勝の確信が持てない大堀に笑顔は見られなかった。
大堀の笑顔が弾けたのは、アテストを終えてからだった。友人達に祝福をされると、照れ笑いに続いて、うれし涙が頬をつたった。「昨年は11位。この1年でショートアイアンのバーディパットをしっかり打てるようになった」という自信を持って臨んだ本選手権で大輪の花を咲かせた。「来年にはプロテストを受験したい。でも、これで女子オープンに出場できるので、ローアマチュアを狙いたい」全国大会初優勝が大堀に新たな自信を与えたようだ。
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