スタートの1番ホール。山本政実(ミッションバレー)は、いきなりのピンチを迎える。ティショットは左ラフ。2打目は木の枝が気になり、低く出してグリーン奥にこぼれ、アプローチが寄らずにボギー発進となった。しかし、ドライバーショットが好調な山本は、3番(パー5)で早くも1度目の勝負に出る。「冒険をした」左ラフからの2打目でグリーン手前30ヤードほどの位置にあるバンカーをユーティリティーの2番で果敢に越すと、サードショットはグリーン左ラフに外れるが、8ヤードのアプローチをピッチングウェッジでチップインバーディ。5番(パー4)ではフェアウェイ左サイドから残り100ヤードを80センチにつけて、この時点で通算
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1アンダーパーにスコアを伸ばす。この時点で青野と通算1アンダーパーで並んだ山本だったが、続く6番(パー3)で3パットのミスをしてから、突然スウィングのリズムが狂い始める。それまで好調だったドライバーに右のミスが見られるようになると、「とても早くて難しかった…」と舌を巻く岐阜カントリー倶楽部のグリーンを全く読みきれず、9番まで4連続ボギーを叩き、前半を終えて通算3オーバーパーまでスコアを落とし、青野に2打差をつけられてしまった。
後半も苦戦のラウンドが続く山本。12番(パー4)では、12メートルから3パットでダブルボギーを叩いてしまい、青野に3打差まで差を広げられる。「正直、優勝は難しいと思っていた」山本だが、この日の強風が幸運を運んでくれた。好調なショットで首位を行く青野は、アゲインストの風でドライバーの飛距離が伸びずに苦しみながらもパーセーブを続けていたが、15番でボギーを叩いてからスコアを崩し始める。16番(パー5)では、ティショットで山本が青野に40ヤードも飛距離で勝ると、山本は2打目をバンカーに打ち込みながらも1.5メートルのバーディパットをねじ込む。一方の青野は、プレッシャーからかこのホールでダブルボギーを叩いて、一気に山本が青野を逆転。山本は最終ホールをボギーとしたものの、この日3バーディ・6ボギー・1ダブルボギーの77でホールアウト。通算5オーバーパーで本選手権初出場初優勝を果たした。
山本は、3年前に大病を患い、ゴルフもままならない状態になったという。「リハビリを兼ねてゴルフを再開しましたが、最初はドライバーショットも150ヤードしか飛ばなくて・・・」という。後遺症で、自分の身体が思うように動かせない苦しみの中で、山本を救ったのは佳代子夫人だった。「家内は、ゴルフをすることにとても理解があって。家内の励ましもあって、競技ゴルフに再び挑戦する決意も出来たし・・・感謝してもしきれないです」と、満面の笑みを浮かべる。全国大会初優勝の栄冠を夫人とともに喜ぶ山本だが、「優勝の実感は全然湧いてこない」と話す。来年の本選手権は南九州CCでの開催が決定している。地元九州での開催にディフェンディングチャンピオンとして臨む山本。大病を克服し再び競技ゴルフに戻ってきた充実感と達成感に満たされていた。
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