勝者の影には、素晴らしい敗者という存在がある。準決勝で比嘉に力負けした堀奈津佳(徳島)と、池田に惜敗した佐伯珠音(ミッションバレー)は、2人とも素晴らしい敗者だった。ともに相手にリードを許し、一度も逆転をすることが出来ずにマッチを終えたが、悔しさを噛み殺し、清清しささえ感じさせた。
堀は、今年が最後の日本女子アマ出場と決めている。その決意が、ストロークプレーのときから見て取れた。気力と気合が充実した表情。考え抜いたコースマネジメント。最後のアマチュア最高峰の舞台に相応しいプレー振りで準決勝に駒を進めてきた。
その準決勝の相手は、ともに国際競技で日本代表として戦ってきた比嘉。飛距離に
劣る堀は、ティーショットで3番ウッドを多用してフェアウェイキープからセカンドショット、アプローチで活路を見出そうとしていたが、比嘉はそれに動じることなく、堀に隙を与えない。4番で比嘉にリードを許した堀は、その後6downまでリードを広げられ、5and3で敗れた。「自分の調子は決して悪くはありませんでした。だけど、気持ちが入りすぎてしまって、途中から空回りしてしまったかも知れません。自分からボギーを叩いてしまって、悪い流れのままリードを広げられてしまいました。マッチプレーでボギーを叩けば勝てませんよね。その鉄則がわかっていながら…」と悔しさを噛み殺す。「今年が最後の日本女子アマなので、優勝したかったけれど…」堀は、涙を堪えながら、気丈に答えていた。
一方、準決勝でメダリストの池田に3and2で敗れた佐伯は、「ベスト4までこれたことがラッキーだった」と、話す。2回戦では、JGA女子ナショナルチームメンバーで昨年大会ランナーアップの柏原を退ける殊勲をあげ、この準決勝でも大物食いを果たすかと思われた。2番で池田がバーディを奪ってリードを許すと、3番でリードを広げられる。6番を獲り、一息ついたのも、つかの間。9、10番と獲られ、その差は3downに広げられる。ここから15番まではお互いに一歩も譲らず引き分けを続けて粘りを見せたものの、16番で力尽きた。「準々決勝までは長いパットが入ってくれたり。本当に運が良くて勝ててきたと思っています。自分でもびっくりするぐらいでした。でも、運だけでは勝ちきれません。
池田さんは、ミスショットをしても、それを最小限のトラブルで回避する。ミスがスコアに直結しないんですよね。粘り強いし、バーディもたくさん獲っていたし。自分も、もっと実力をつけて、来年頑張ります」高校1年生ながら、冷静に自己分析する佐伯。堀との対戦となる明日の3位決定戦で、本大会2度目の殊勲をあげられるか。
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