小休止を挟んでの後半。勝負は、比嘉の圧倒的優位の展開だったが、気を緩めることはなかった。実は、この大会に入って沖縄の先輩である宮里美香から何度もメールが届いていた。決勝前夜にも、あった。
「勝った、と思ったところから綻びが始まる。36ホール戦い抜くつもりで集中していけ。そういうメールでした。昨年優勝の酒井美紀さんからも、同じような内容のメールをいただきましたので、心に刻み込んでおきました」
22ホール目を終えて8アップ。なおも比嘉の攻めのゴルフが続いていた。途中で「ちょっと疲れを感じたので、1クラブ大きめのクラブでグリーンを狙ったら、オーバーしてしまって…。なんだ、ちっとも疲れてい
ないじゃないか。そんなこともありながら」消極策を選択することは1度もなかった。ところが、パッティングの決定力に陰りが見え出すと、対照的に池田がリズムを取り戻して25ホール目からの5ホールで3ホールを変えされてリードは5アップに。「あれはチヒロがいいゴルフをしたので、取り返されたのは仕方がない、と気持ちを切り替えました」
そして、決着ホールとなった31ホール目を迎えた。比嘉は2オン。池田は第2打を手前右バンカーに落としていた。「でも、チヒロのショートゲームは、自分より上手いから寄せてくると思っていた」と比嘉がいうそのバンカーショットを池田はホームラン。4オンとなった池田は、比嘉がファーストパットをしっかりと寄せたところでボールをピックアップして6and5の決着となった。
「優勝しか考えずに臨んだ日本女子アマで、狙い通りに優勝できて本当に、ほんとうにうれしいです」昨年の日本ジュニアゴルフ選手権競技(15~17歳の部)に続くJGA主催競技での優勝。「こうなったら、日本女子オープンも予選通過とか、ローアマチュアなんて言ってないで優勝を狙います。出る試合は、全部勝つ。そういう強い気持ちで競技に臨みたい」
この大会で、掴んだのは優勝だけではなかった。「自分に足りないものがあるのが、よくわかりました。でも、それは、まだ成長できるということでもあるわけで、ショートゲームのバリエーションを増やし、精度を高めれば、もっと攻めのゴルフを徹底していけると思いました。グリーンをはずした後の処理に自信を持てれば、際どいところも積極的に狙っていける。そういうゴルフを自分の今後のスタイルとして確立させていこうと思いました」
近い将来のプロ生活まで見据えて、進化し続ける女子アマ・チャンピオンであった。
|