この日の松山英樹(東北福祉大)のゴルフは、ひとり異次元でプレーしているようにさえ見えた。18ホール、どのホールも一筋縄ではいかない場所にホールを切ってあった。それはマッチプレー進出者32名を決めるためには仕方のないことである。非情にも振るい落とさなければならないからだ。
けれども、10番ホールからスタートした松山は、11、12、14、15、16番ホールと5バーディをもぎ取って31でターンしたのである。ショットが冴えていた。おそらく松山という選手は、誰もが難しい、いやらしいというセッティングになるとショットのラインも出し易くなる選手なのかも知れない。
「よく飛んでいるんですよ。マスタ
ーズのときよりも、かなり飛んでいるという気がします。なんででしょうかね」とあっさりというが、それは松山の身体をみれば一目瞭然である。しっかりとトレーニングした成果がでている。
「後半になってバーディが7番だけだったのは、パッティングでしょうね。どうしても力んでしまう。もうすこし脱力できれば…」
通算8アンダーパー。2位の藤本を2打離して初のメダリストとなった。
「まずは日本アマチュアのタイトルを、できればメダリストになって優勝というのが目前の目標ですから…」と1ヶ月ほど前に話していた目標を着実にクリアしている。
松山という選手のいいところは修正能力が早いことかも知れない。昨日の課題を今日は、すぐに修正してスコアに結びつける。今日も「まだティショットに不安があるんですよ。10番、8番がそのいい例」と語る。出だし10番ホールの第1打は左に引っ掛けて隣の18番ホールまで曲がった。そんなスタートでも66で回ってくるあたりが大器を感じさせる。
出場選手全員がホールアウトして、マッチプレー進出者が決まった後には、メダリストやマッチプレー進出者の栄養を称えるレセプションがある。それまで、かなりの時間があった。彼は、ネクタイにブレザー姿に着替えて、練習グリーンで練習している選手たちと会話を交わしていた。
「なんか選手のマネージャーみたいで格好いいなぁ」と冷やかす関係者がいた。確かに、松山はゴルフウェアよりもネクタイ&ブレザー姿がよく似合うようになっている。それだけ人間的にも成長しているのだろう。
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