「藤本さんは、凄い。付け入る余地がなかった」というのが、準決勝で対戦した浅地洋佑(鷹)の印象だった。特に、決着を導いた15、16、17番ホールで、バーディ、バーディ、バーディと、まさにたたみ込むエンディングだった。
15番ホール、パー5。藤本佳則(東北福祉大)は、残り206ヤードのアゲインストで、一瞬、逡巡した。「狙おうか、刻もうか…」その選択理由は「そろそろ勝負に出てもいいかな」ということだった。
「どうしようかちょっと迷っていたときに、キャディも狙いましょうとは言わなかったし、浅地君も刻んでいましたから、ここは刻もうと思い3打目のアプローチ勝負で、OKバーディとしました。結果的に、
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浅地君もバーディで分けたけれど…」結果的に、ここで分けたことで勝負に出るスウィッチに切り替わったのだろう。
試合を振り返ると、出だしの2番ホールで浅地に獲られ1down。それを6番ホールで藤本が取り返してオールスクウェア。さらに10番ホールは浅地が獲り、再び12番ホールで藤本が取り戻してオールスクウェア。
勝敗が動いたのは、14ホールでわずか4ホール。残り10ホールは、すべて分けていた。
その結果だけ見れば、ほぼ互角の勝負と読み取れる。けれども、浅地にとっては、それがむしろ威圧感として響いてくる。それこそ藤本が昨年までとメンタル的に成長した証だった。
「いままでだったら、早く終わらせたい。決着を急ぎたいという気持ちがあったけれど、いまはそうではなくて、相手にリードされようが、こっちがリードしようが、何事もなくやっていけるようになった、というかそういうゴルフをしようと心がけました。マッチでは、自分がイケイケでも相手のリズムがありますからね。ゆったりならゆったりの自分でいけばいいと思えるようになったんです」
続く16番ホール、パー3。三好カントリー倶楽部・西コースの名物ホールである。
藤本は、このクセのあるパー3でバーディとした。
「午前のマッチもバーディだったんです。6番アイアンで3メートルを入れました。ああいう難しいホールになると、何故か、より集中できるんですよね(笑)」浅地は、パー。そして決着となった17番ホール、パー4。
ここで藤本は、グリーン奥からの12~13ヤードアプローチを直接カップに沈めたのである。
「あの場面、選手としては一番苦しい体力だと思うんです。午前に18ホールのマッチを終えて、たぶん30ホール以上この猛暑でラウンドしてきているわけですからね。その場面で、あのショットが出るとは…」と、対戦相手の浅地は、打つ手なしという表情をした。
明日の決勝は36ホールのマッチ。対戦相手は、昨年の日本学生で藤本が敗れた相手、櫻井勝之(明治大)である。
「昨年は、勝ち急いで負けたんです。でも、今回は…」と藤本は、キリリと唇を締めた。
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