佐々木笙子(猪名川町立猪名川中3年)にとって、今回が日本ジュニアへのデビュー戦だった。ゴルフ歴が浅いわけでも、実力がなかったわけでもない。9歳でゴルフを始め、中学生になると、男子プロの地区オープンに何度か出場している。その中のひとつ、京都オープンでは、昨年に続き2年連続で男子アマを抑えてローアマチュアに輝いている。
最大の武器は、飛距離だ。ドライバーで270ヤード近く飛ばす。ゴルフの先生は、岡本昭重プロ。あの岡本綾子プロの師匠だった人である。「先生には、形に拘らずに、とにかく飛ばせ。振れるだけ振れ。そう教えられました。ですから、ずっと飛ばすことに専念する練習を続けてきました」
ある
程度スウィングが固まりかけると、冬にはそれを壊して、さらに振れる方法を探り、アドバイスを受ける。まさにビルト&スクラップの繰り返しである。成長期に一区切りついた3年時には、3キロのダンベルを持ってのシャドースウィングで、さらに飛距離を伸ばした。
もっとも、第2ラウンドに自己ベストスコアの68をマークする原動力になったのは、持ち前のパワーではなく、アプローチショットとパッティングであった。2番で第2打をグリーン奥のカラーにこぼしたが、ここからチップインでバーディを奪う。その後も4バーディを加えることになるのだが、すべて1メートルから3メートルのパットを決めてのもの。そしてピンチもアプローチショットとパッティングでしのぎ切った。18ホールでパット数は22。この数字が、佐々木の第2ラウンドのゴルフを全て物語っている。
ところで、なぜ、これまでジュニア競技にエントリーしなかったのか。理由は、こうだった。
「父がラグビー選手で、トレーニング方法も私の年齢に合ったメニューを教えてくれていました。それで、ジュニア競技なのですが、自分でキャディバッグを担いでプレーしなければなりません。父は、“成長期にそういうことをすると成長の妨げになったり、故障の原因になりかねない”と言って、男子プロの試合に出場するのは認めてくれましたけど、ジュニア競技には、エントリーさせてくれませんでした」
3年生になって、それも解禁になった。167センチ。身長の伸びもほとんど止まったことで、成長期も、ひとつの区切りを迎えたという判断だったようだ。最初のジュニア競技は、7月の関西ジュニアだった。2日間競技で2日目の17番ホールを迎えたところで5アンダーパーまでスコアを伸ばし、トップに立っていた。ところが、その17番でラフからの第2打をミスしてしまった。残り160ヤード。佐々木は「フライヤーになるかもしれないから、グリーン手前でもいい」と9番アイアンを手にした。このショットが想定外の飛びとなってグリーンを越え、ボールはOBゾーンに消えていった。1打差で優勝を逃がすことになった夏の口惜しい思い出。
日本ジュニアでは、今度こそうれしい思い出を作りたいと願っている。
「最終ラウンドは、ショットを調整して、今日よりももっといいスコアを出します」
初挑戦、初優勝―。夢じゃない。
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