本選手権で最も注目を集めているのは、松山英樹だが、地元出身の田中政佳にも松山に引けをとらない数のギャラリーが奈良国際ゴルフ倶楽部へ応援に駆けつけている。その田中の1回戦の相手は、ベテランの田村尚之。昨日のストローク・プレー終了後のインタビューで、社会人としての意地を見せたいと話していた田中にとっては、社会人同士の1回戦は皮肉な顔合わせとなった。玄人好みのこの1回戦、田中は「田村さんとはミッドアマでも一緒になることが多いですし、気楽に出来ました」という。しかし、そこはプライドをかけた戦い。「普段は、お互いによく喋るのですが、さすがにプレー中は一言も言葉を交わさず…」と緊迫した雰囲気でマッチが進ん
でいく。ただ、その内容は、「お互いに昨日までの疲れが抜け切れていなくて、ショットもぶれていた」と、両者の日本アマに賭ける思いとは裏腹に、ボギーやダブルボギーを叩く乱戦模様となった。それでも、田村を2nad1で下した田中は、日本アマの自己最高順位となるベスト32を更新。続けて、Soo-Min LEEとの2回戦に臨んだ。アジアアマチュア選手権2位の実績を持つLEEとの対戦は、苦戦が予想されたが1番で2メートルのバーディを決めて幸先よくリードを奪った田中が終始主導権を握る圧倒的な戦いとなる。2番ではLEEの3パットで2up。5番で田中がダブルボギーを叩いて1upに戻され流れがLEEに傾くかと思われたが、6番でLEEより遠い2.5メートルのパットを沈めた田中がバーディを奪い両者が引き分ける。「実は、6番ホールのバーディパットは、田村さんとの1回戦と同じラインと距離で」と、勝負の分かれ目となったこのホールを振り返る。田中は7番、8番でともに2メートルを沈めるなど前半を終えて4upの大量リードを奪って「気持ちに余裕が出来た」と、後半もLEEとの差を守り、4and2で殊勲の勝利を収めてベスト8入り。1、2回戦と強敵を退けた田中は、「やっぱり地元ですし、メンバーの方々にも良くしてもらっていて。応援にもたくさんの方に来ていただいていますしね」と、快進撃の要因を笑顔で語る。本年のマッチプレーには田中を含めて社会人6名が進出。しかし、明日の準々決勝に残ったのは田中ただ一人。冗談を交えながら今日の対戦を振り返った後、「自分を応援してくれている方々はもちろんですが、負けてしまった5人の社会人の代表として頑張らないといけない」そう言った時、笑顔で饒舌に話した田中のまなざしに、真剣な光りが宿った。
一方、田中に敗れたLEEは、最後までグリーンに悩まされた。2番では5メートルから3パットのボギーで田中にリードを広げられると、14番でも7メートルから3パット。7番では1.5メートルを外して勝負の流れを引き寄せることが出来なかった。「1メートルのパッティングも3回、外した。自分はストローク・プレーの方が好きです」と思うようにならなかった日本アマを振り返った。「来年、もう一度リベンジしたい」悔しさを胸に日本アマ再挑戦を誓ったLEE。幼少期からゴルフ漬けとなる韓国アマチュアゴルフ界では、11歳でゴルフを始めたLEEは奥手かもしれない。それでも、ゴルフ歴8年でアジアアマチュア選手権2位の実力をつけてきただけに、この無念さを晴らすべく更に練習を積み、より強くなった姿を来年の東京ゴルフ倶楽部で見たいところだ。
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