小西健太は、素直に喜びを表現した。
「とても嬉しいです。自分が憧れている選手の一人ですから、それがマッチプレーで、1対1で勝負できたわけですからね」
小西は、松山との勝因は「おそらく自分(のパット)が入って、松山さんが、ほんの少しだけ入らなかった、そんな僅かな違いだと思います」と語った。
松山英樹は、この日本アマで2008年はベスト16。2009年はマッチに進めず。2010年は、ベスト32。そして昨年の2011年は、メダリストを獲って、ベスト16にとどまった。松山は、マッチプレーが苦手なのかも知れない。
今年も、ベスト16にとどまることになったのだ。
「下手なだけです」と無口な男が、
よけいに無口になっていた。悔しさが表れていた。「昨日と比べたら、後半入らなかったけれども、いいパッティングができていた。あとラインとタッチをあわせる練習をしないと…」と口を横一文字にした。
マッチの対戦表が発表になったとき「もし自分が1回戦を勝ち抜いたら、2回戦で松山さんとあたることになる」と小西は、憧れの松山と戦うにあたって、自分は挑戦者なのだと、もう一度、言い聞かせていた。そう思うことで、気持ちが楽になっていたともいう。
1番で、小西が1up。続く2番は、松山がボギーとし2up。すかさず松山が、3番で獲り1つ獲り返した。5番で小西が落としてオールスクウェア。しかし、6、7番と小西が獲って再び2up。そのまま後半へと進んだ。
「後半、間違いなく松山さんが獲ってくると思っていましたので、前半の2upは、自分としてはイーブンのつもりでいました。ですから振り返れば、一度も緩みのないゴルフができていたのだと思います」。
10番、案の定、松山が獲り返した。しかし、この日の小西は、しぶとかった。獲ったらとり返す。11番で、2up。さらに15番で松山に獲られても、すかさず16番で獲り返した。そして17番を分けて2and1で小西が松山を下したのである。
「僕がナショナルチームに入ってから、練習ラウンドとか、よく一緒に回らせてもらいました。でも、試合では、初めてなんです。やっぱりラフの処理のしかたとか、勝負どころのうまさとか、凄いですね」。
小西は、何度も「やばい」と思う場面に遭遇していた。でも、このマッチに限っていえば、松山のパッティングは「ギリギリのところで外していた」という。傍観者として見ていれば、全部、惜しいパットを逃していたようだったという。
マッチ終了後に、松山は、小西に声をかけた。
「ナイスプレー。次もがんばれよ!」
小西にとっては、その一言が、とても嬉しかった。
|