今年は、仕事の関係で納得いく調整が出来ないまま、女子シニア開幕を迎えた田中真弓(成田東)。昨年は強い意気込みが空回りして、第1ラウンドに出遅れて3位に終わったが、今年は首位と4打差の5位タイで最終ラウンドをスタートする好位置につけていた。その田中は、2番で6メートルのバーディパットを沈めると、3番(パー3)は9番アイアンのティーショットが3メートルについて連続バーディ。9番をボギーとしたものの、この時点で通算2オーバーパーの首位タイグループに名を連ねた。
しかし、11番でボギーを叩くと、17番でも「この日一番悔しかった」3打目のミスからボギーを叩き、この時点で首位の中田に3打差をつけられ
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ていた。「今日はパー5で3ボギーを叩いてしまって…それに17番のボギーは、本当に悔しくて。最終ホールだけは悔いを残さないように」と打った左ラフから残り140ヤードのセカンドショットを8番アイアンで20センチにつけてバーディフィニッシュ。この日パープレーの通算3オーバーパーでホールアウトした。その時点では、まさか首位の中田が残り2ホールで3ストロークもスコアを落とすとは思いもしなかっただろうが、勝負は中田とのプレーオフへと持ち込まれた。そして、終わってみれば、「悔いない最後にしよう」と放った18番ホールの2打目が田中が初優勝を手繰り寄せる要因となった。プレーオフ2ホール目の18番では、残り130ヤードで手にした8番アイアンがグリーン奥にこぼれるピンチもあったが、辛くも両者ボギーとなるなど、プレーオフは4ホール目に突入。この日3度目の18番ホールでのプレーとなった。そして、その3度とも田中の2打目は、8番アイアンの距離が残った。「最初の18番のプレーオフでぴったりだと思ったセカンドショットが、グリーンオーバー。最後の18番はその時より10ヤード後方で…クラブ選択に迷いましたが、最初のオーバーがあったので、これで距離はぴったりだと」自信を持って振りぬいた球が2メートルについて、長い戦いに終止符が打たれた。
「嬉しいというより…ようやく勝てた」疲れた表情で1日を振り返る田中。「周囲の方たちから優勝という大きな期待をいただいて、それに応えたいと思っては、空回りばかりで…この優勝で、ようやく肩の荷が下りた感じです」と笑みを見せる。しかし、田中のスタートダッシュを失敗させてきたのは、周りからの期待よりも田中自身の優勝への強い思いだった。実は、永年師事していたインストラクターが数年前に他界した。その時に全国大会での優勝を誓ったという。32歳で始めたゴルフは趣味ともいえない遊びのひとつだったが、上達する喜びと厳しくも楽しい競技ゴルフへの扉を開いてくれた恩師ともいえる存在を亡くしたとき、強くなって恩返しがしたいと心に決めた。思い続けてきた全国大会優勝という誓いが、この日最後に悔いを残したくないという気持ちに繋がって、土壇場で中田に追いつき、優勝杯を手にすることが出来た。今でも「ショートゲームの向上がドライバーやアイアンショットの正確性につながる」という亡き恩師の教えを胸に練習を積み重ね、ついに霊前での誓いを叶えた田中。「やっと…やっと勝てました」そう繰り返す田中の言葉は、天国で田中の勝利を微笑んで喜んでくれている恩師に向けられているように感じた。
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