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優勝を決めたパットにガッツポーズ |
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後半パッティングに苦しんだ松原 |
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決勝マッチには、大きく変わる流れが、何度もあった。序盤をリードしたのは森田遙(坂出)だった。5番までにふたつのパー5ホールをバーディにして2upと優位に立った。「いつもエンジンのかかりが遅くて、展開を苦しくしてしまうから、今回は準々決勝からスタートダッシュを心掛けてきた」という姿勢が、もたらした先制攻撃であった。
ところが、続く6、7、8番で松原由美(朽木)が3連続バーディを奪ってマッチは逆に松原の1upへと変わり、流れは大きく松原に傾いていった。前半の18ホールを終えて、松原のリードは4upにまで広がっていた。後半の18ホールに移るまでの短い休憩時間を森田は練習グリーンで過ごした。
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息の詰まる決勝戦となった |
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決着後涙を堪えきれなかった両者 |
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「フックラインはスムーズにストロークできるのに、スライスラインがうまく打てなくて、修正が必要だと思ったんです。この段階では、焦りはありませんでした。昨年の決勝では比嘉(真美子)さんに、前半で5upされましたから、また同じ流れかな…なんて、ちょっと笑いたくなっていました」
森田は「ゴルフだけは追いつめられると強いタイプ」と自身のことを語る。そして、後半のマッチが始まった。森田は、ジワジワと追い上げていった。26ホール目で1downにまで詰め寄る。しぶとくパーパットを決めて、ピンチをしのぐ本来の持ち味が、マッチプレーでは相手にダメージを与えていく。
焦りは、追い込まれた松原にあった。「後半のマッチになって、気持ちも体も自分じゃなくなっていくような感じがしてきました。パッティングはしびれるし、ショットでは体がうまく動かなくなるし…。昼ご飯を食べなかったせいかな、と思って、おにぎりを食べたりしたけど、変化はありませんでした」
流れは、また森田に戻ってきていた。32ホール目、33ホール目、と松原が連続3パットでついにマッチはオールスクウェア。振り出しに戻ってしまった。そして、ここからが本当の勝負となる。大詰めに近づいた35ホール目のパー3ホールで、松原があわやホールインワンかと思わせるスーパーショットで1up。最後の最後で流れを自分に向けたかと思われたが、実は、これが最後ではなかった。ドーミーホールとなった36ホール目のパー5で、森田が、この大会ずっとそのパターンを貫きとおしてきたレイアップ作戦から127ヤードの第3打を9番アイアンでピン手前1メートルにつけてきた。松原はアプローチショットを寄せ切れずに2パットのパー。森田は、バーディパットを沈めて追いつき、勝負をエキストラホールに持ち込んだ。
そして迎えた37ホール目。先に松原がバーディパットをはずした後、森田は4メートルほどのフックラインを読み切ってカップインさせ、長く、苦しかった戦いに終止符を打った。
勝者も、敗者も涙、涙…だった。敗者には自分への流れの方が強かったのに乗り切れなかった口惜しさがあった。勝者には、2位に終わった昨年大会からここまでの苦しい道のりがあった。
「昨年、比嘉さんに言われたことがあるんです。優勝カップのネームプレートを指差しながら、次は、あなたよ。私の名前の次に、あなたの名前を刻んでもらってねって。そのとおりの結果になって、本当に何と言っていいかわからないぐらいうれしいし、ホッとしました。気が緩んだら涙が止まらなくなってしまって…」。
一方の松原は、「昨年は森田さんに準決勝で5and4のワンサイドで手も足も出ないような負け方をしてしまったので、そのリベンジをしたいと思っていたのですが、できませんでした。でも37ホールまで戦えたことで自分も昨年よりは成長したのだと思えました」。こう書くと、すらすら話してくれたように受け取られるかもしれないが、実際は、涙をぬぐいながらの途切れ途切れの言葉をつないだものである。
「次に、どんな形式でも森田さんと対決する機会があれば、今度こそ、もっと成長した自分を見てもらいます」。
ランナーアップから優勝へ。4位からランナーアップへ。大熱戦を演じた両選手は、間違いなく成長していた。次回は、さらに成長した姿を見せてくれるに違いない。
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