ひとつのタイトルが選手を大きく成長させる。それを体現しているのが大堀裕次郎(ムロウ36)だ。今年の関西アマチュアゴルフ選手権で初優勝を果たし2009年大会以来2度目の日本アマ出場となった大堀は、ストロークプレーを3位タイで通過すると、遠藤健太(アルファ津田)との1回戦をエキストラホールにもつれ込む激戦の末に制して、2回戦に駒を進める。
白石大和(名倉)とのマッチアップとなった2回戦は、「ショットが好調ながらパットに苦しみイラついた」という初戦とは一転、その鬱憤を晴らすかのように大堀の一方的な展開となった。2番を白石に取られたものの、「前半はリードを奪われてもいい」という心の余裕からか大堀
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は動じることなく4番でピッチングウェッジのティーショットを4メートルにつけてバーディを奪ってオールスクウェアに戻すと、「流れを掴んだ」と、ここから5ホール連続で大堀が獲り、前半で5upの大量リードを奪う。後半に入ると、白石も粘りを見せたが、13ホール目を大堀が獲って6and5でベスト8入りを果たした。
大堀は、2007年に将来のナショナルチームメンバーを目指すチーム・ジャパンジュニアに選抜され、石川遼や伊藤慎吾、古田幸希らとともに汗を流した。しかし、ここから大堀の苦悩が始まる。アマチュアでプロツアー優勝を果たし、日本プロゴルフ界を背負って立つ選手になった石川や、日本アマでも好成績を残してきた伊藤らの後塵を拝した大堀は、結果が出せない焦りが悪循環になり、その才能を生かし切れない時を過ごす。大阪学院大学に進学後も、なかなか芽が出ない大堀が大きく変わったのは今年の関西アマで初優勝を果たしてから。タイトルを獲った自信が心の余裕を生み、「マッチプレーは1ホールで大叩きしても、そのホールが負けとなるだけ。だから、思い切ってドライバーを振ってアドバンテージを取る」と大胆な戦略も立てていける。それに加え、この東京ゴルフ倶楽部はチーム・ジャパンジュニア時代に合宿でプレーをした経験もあり、「OBが少ない東京ゴルフ楽部は好きなコース」と相性の良さも実感している。
石川や伊藤も成し遂げていない日本アマのタイトル。是が非でもこれを手にしたい大堀だが、もうひとつ、この日本タイトルへのモチベーションになることがある。大堀の兄弟は全てゴルファーで、姉の大堀薫は2010年の日本女子学生チャンピオン。「やっぱり、姉に続きたいです。優勝を狙っていますから」不遇の時代を抜けた大堀。初の日本タイトルに向けて、目の色が変わっている。
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