2位に4打差をつけて迎えた堀琴音(滝川第二高校3年)は、スタート前に「この2日間やってきた自分のゴルフをやり通せばいい」と、気持ちを固めていた。前夜、女子プロトーナメントに出場するため箱根にいる姉の堀奈津佳からメールが届いた。中味はほんのひとこと「びびるな」だった。
「何をいっているのかな…」と、軽く受け取っていた堀は、自分が決めたことをやればいいと思うばかりだったという。姉のメールの意味が、現実となって押し寄せてきたのは、スタートしてからの5ホールだった。同じ最終組でラウンドする日本女子アマチャンピオンの森田遙がここまでに3バーディを奪って2打差まで詰め寄ってきた。
「逆転されるんじ
ゃないか…って、怖かった。正直ビビリました。姉が言っていたのは、このことだったんだと思いましたね」。
そんな堀が、6番(パー5)で大きな転機を迎えようとしていた。スタートから不安定だったドライバーショットだったが、こういう状況では自分の得意とする低い弾道のショットを打とうと決め、低く、思い切りよく振り抜いた。これが「今大会最高の1打」(堀)となってフェアウェイ中央をとらえた。第2打でピンまで100ヤード地点に運び、第3打のウェッジ(ロフト50°)でピン横1.5メートルにつけた。得意のスライスラインだった。
「本当は50度のウェッジだと95ヤードならぴったりなんです。だからちょっと強く打たなければいけなかったし、そうすると引っ掛かりそうで怖いのですが、フィニッシュまで気持ちよく振り切ろうと自分に言い聞かせて決断できました。結果もよし。あのホールで、ドライバーショットもアイアンショットも感覚をつかめましたし、これで大丈夫と、落ち着けました」。
1.5メートルを沈めて森田に3打差をつけると、あとは隙のないプレーを続けた。ドライバーはフェアウェイをとらえ、アイアンショットもグリーンをはずさない。終わってみればノーボギーで4バーディを奪い、スコアは通算13アンダーパーまで伸ばしていた。2位に7打差をつけての初優勝であった。
「大きな大会での優勝は、これが初めてといっていいので、本当にうれしいです。目標にしていた3日間60台のスコアでプレーすることもできましたし、その内容が3日間で2ボギーだけというのも、うれしい。ピンチを招かないこと、動じないことというマネジメントとメンタリティー両面で成長できたと思います」。
全米女子アマの経験を日本ジュニアで生かし、成長を自覚できたこと。それがこの夏、堀が得た大きな成果であった。箱根にいる姉には、この優勝をメールで知らせるという。その中味は?
「“勝ったよ”って、ひとことです。それで通じると思います」。
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