三木逸子(土佐)は前人未到の大会5連覇を達成したあと、6連覇を阻まれた昨年をはさんで、再び日本女子シニアのタイトルを手にした。この強さはどこから来るのだろう。この日も決して万全な態勢ではなかった。スタートホールでダブルボギーを叩き、続く2番でもボギーという内容だった。
しかし、違ったのはこの後からだ。パーを拾い続け、9番でボギーを叩いたものの、首位に並んでいた花井正子が崩れ、ハーフターンした時点では首位。キーとなったのは、12番と13番のプレーだった。12番ホールはティーショットを右の木に当て、いざセカンドショット地点に行くとボールがない。その付近を同伴競技者はもちろん、競技委員も球を捜し始めたが、見つからない。三木は頭の中で「だめかな」とロストボールを覚悟した。するとキャディさんがフェアウェイの真ん中にボールがあるのを発見した。どうやら木に当たって、フェアウェイに返ってきたようだ。残り160ヤードの第2打は、幸運を活かしてチャンスにつけたかったところだが、グリーンを30ヤードもショート。たちまちボギーのピンチだ。しかし、ここから1メートルにつけてパーをセーブ。これで流れを引き寄せた。次の13番ホール(331ヤード・パー4)は、フェアウェイの真ん中に木が何本か立ち、ボールの行方を阻んでいるホールだ。アゲインストの風が吹いていたが、三木はドライバーを強振して、この木を越えて行った。残りは85ヤードしか残っておらず、52度のウェッジでピン手前2.5メートルにつけ、バーディを奪った。この日はパッティングがショートする傾向を考慮し、強めに打ったところ見事にカップインしたのだ。
これで通算4オーバーパーとし、この時点で2位の出本珠美に4打差をつけていた。その後17番でボギーを叩いたものの、大勢は決していた。勝負のアヤ、というものを心得ている感じであった。
三木は以前、練習場では500球から600球ぐらいを打ち込んでいたという。ただそれだけ打ち込むと「手は痛くなるし、体も疲れる」ことから考えを改め、「毎日100から120球を打つ」ようにして、球数を減らしたぶん、毎日継続するようにした。また、トレーニングも欠かさない。「プロを目指すなら1年間戦える体力をつけなければいけない」とジュニアを教える手前、「自分もやらないといけない」と体作りに励んだ。それが2000年のころの話だ。それがやがて2008年からの5連覇の偉業へとつながっていく。「他の人よりは怪我や病気も少ない」と丈夫な体に生んでくれたことに両親へ感謝の念もささげる。
「無理をせず、持続させる」ことが重要であるとのこと。であるならば、連勝も無理せず、続くことができるのかもしれない。強さの秘密の一端を垣間見た気がした。
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