「バーディがたくさん獲れるゴルフになっているので、マッチプレーが楽しみです」。
これは、第1ラウンドの68を上回る66をマークしてクォリファイングラウンドを通算10アンダーパーでクリアした権藤可恋(佐賀)の話だ。第1ラウンドが6バーディ、第2ラウンドは8バーディ。計14個のバーディ(4ボギー)を奪ったのだから、荒稼ぎといえる。
「ショットは、必ずしもパーフェクトというわけではないのですが、距離の短いホールではショートアイアンのショットが距離感、方向性共にうまくコントロールできていてバーディチャンスを作れた。そして、2メートルから4、5メートルのパッティングが決まったことで、バーディを量
産できたのだと思います」というのが、2日間の権藤のゴルフの内容だ。1年前には、こういうゴルフになることなど、考えにも及ばなかった。実は、パッティングイップスに陥っていた。
「1メートルのパットが、カップにかすりもしなくなって…。しっかり打とうとすればパンチが入って倍も転がっていってしまったり、ジャストタッチで入れようとすれば、はるかにショートしたり…。父親とゴルフをしたときに、はっきりと言われました。“典型的なイップス症状だから、それを克服しないとゴルフにならないぞ”って。そこから、パッティング練習に時間を割くようになりました。それこそ、これなら“絶対に入る”という30センチぐらいから始めました。50センチ、70センチ。このあたりまでは、決められるようになりましたが、1メートルとなると、手が震えてしまったり、パンチが入ってしまったり…。そんな繰り返しで、なかなか脱出できないでいました。本当に情けなかった。でも、そういう自分を責めると、ますます深みにはまると言われて、ミスする自分を許し、受け入れるようにしたら、少し気持ちが楽になってきて、次に、入る、入らないは別にして、決めたらそこに打つことを心掛けて、いいストロークができたら自分をほめてやるようなこともして、徐々に快方に向かうようになりました」。
1年間の“闘病生活”を権藤は、そう振り返った。今年になって、ようやくパッティングのストロークが安定しはじめ、自信も取り戻していった。プロテストにも間に合った。2次通過。ファイナルを前に迎えた日本女子アマでは、どんなパッティングへと脱皮しているのかというと―。
「第1ラウンドよりも、第2ラウンドの方が、さらに良くなっていました。ラインを読んでいる段階から“あ、この狙い通りに打てば入る”という確信が生まれていて、そのラインに乗せていけばボールはカップに転がり込む。そんな感じでしょうか。今日は、フックラインが多かったように思いますが、今は、どちら(フックでもスライスでも)のラインでも同じように自信をもってストロークできています」。
完治を通り越して絶好調という状態にいるのである。これまでの自己ベストスコアは霞ヶ関CCでの日本ジュニアでマークした65。「10番で6個目のバーディ(そこまでボギーなし)を決めたあたりから、自己ベスト更新もちょっと意識したら、その後すぐにボギーになってしまって…。欲張り過ぎてはいけないんですよね。マッチプレーに向けていい教訓になりました。攻めつつ、欲を出し過ぎず。その気持ちで戦っていきます」。
権藤にとっても、これが最後の日本女子アマと心に決めている。目指すは、もちろん有終の美。それも、メダリストからの完全優勝である。
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