2日間通算4オーバーパーでホールアウトした松原由美(朽木)は、スコアカードを提出すると順位を確認するまでもなく、口を堅く結んで帰路についた。昨年大会の決勝で、その松原を下して初優勝を遂げた森田遙(坂出)の今大会は、ホールアウト後も、まだ長い時間が続いた。通算1オーバーパー。マッチプレー進出への青信号は、なかなか灯らなかった。後半スタート組の結果を練習グリーンでパッティング調整しながら延々と待ち続けなければならなかった。
そして、全選手がホールアウトしたその先に待っていたのは、プレーオフだった。通算1オーバーパーの選手が、森田を含めて11選手。このうちマッチプレーに進める32人に食い込める
のは6人。森田の連覇の夢は、このサバイバルゲーム次第となった。11選手が4、4、3人の3組に分かれて10、18番を使ったプレーオフに突入した。1ホール目で西山美希(小田原GC松田)、山口すず夏(東京五日市)がバーディを奪って勝ちあがった。残る枠は4人。2ホール目では、3選手がボギーを叩いて抜けた。3ホール目は森田をはじめ5選手がバーディを決めて、この5選手が4枠を争うことになった。落ちるのはひとりだけだ。4ホール目。森田のティーショットはプッシュアウトとなって右の林に消えた。他の4選手はフェアウェイか視界の開けたラフにとどまっていた。
「林に消えていくボールを見て“終わったな…”と思いました」。
密集する松林からは、フェアウェイに脱出するだけで精いっぱいという状況だった。ピンまで150ヤード残った第3打はグリーンをとらえたが、パーパットを決められずに、絶体絶命のピンチに立たされた。政田夢乃(オークウッド)、安藤京佳(西条)、中川梨華(那須小川)が次々とパーパットを決めていった。残るは天本遙香(ザ・クラシック)の1.5メートル。これが決まれば、森田の今大会も終わる。外した。これで6人枠のうち5人が埋まり、残る枠はひとつだけとなった。ボギーを叩いたふたりが、5ホール目へと突入した。
夕闇が迫りつつある薄暮の対決だった。パー5の10番。森田は、3オン。4メートル。天本も3オン。5メートル。天本のバーディパットは、カップを越えていった。森田。「ラインは見にくくて…。積極的に、できるだけ直線的に打つ。それしか考えませんでした」というパットは、カップの反対側にあたるほどの強さで飛び込んでいった。32人目。最後に残された1枚の切符を手繰り寄せた瞬間であった。
「本当に全ての1打が重かった。クオリファイングラウンドでは2日間ともショットがぶれて池に打ち込んだり、アンプレアブルがあったりと苦しいゴルフが続いていたので、とにかくマッチプレー進出だけを考えてプレーしていました。本当に、ようやくそれを叶えられました。ダメかと何度も心が折れそうになりました」。
昨年の覇者が、マッチ進出が決まると涙を流していた。これが、森田にとって、さらに長い戦いの序章であれば救われるが…。1回戦の相手はメダリストの権藤可恋に決まった。目下絶好調の権藤に昨年覇者の森田が挑むという図で新たな戦いが待ち受けている。
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