5打差のリードでスタートした河野杏奈(松沢中学3年)の最終ラウンド。前半を2バーディ・1ボギーにまとめて通算7アンダーパーにスコアを伸ばした。最終ラウンドに向けての目標は「ひとつでもいいからアンダーパーで回ること。そうすれば3日間ともアンダーパーのラウンドになるし、結果はついてくる」というものだったから、ほぼ計算どおりのペースであったといえよう。
ところが、同じ最終組でプレーした長野未祈(麗澤中学2年)が、河野を上回るペースで追い上げてきた。6、7番と連続バーディにして、さらに9番(パー5)でも第3打を寄せてバーディを加えて通算4アンダーパーと3打差に詰め寄っていた。5打差から3打差に。
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まだリードしているとはいえ、目の前での追撃はプレッシャーになる。
14番(パー5)で、河野のファインショットが続いた。ドライバーショットできっちりとフェアウェイをとらえたあと、第2打はグリーン手前40ヤード。ピンまでは50ヤードの第3打を確実に上りラインになるエリアに乗せて4メートルを打ち切ってのバーディを奪った。これで長野とは4打差。残りは4ホールとなった。
河野は、ここから本当の緊張が始まったという。「追い上げられてきたときの緊張よりも、優勝が見えてきてからの緊張の方が、何倍も苦しかった」。それが体を硬直させる。ショットを乱れさせる。パッティングのタッチを失わせる。15、16を連続ボギーにして3打差(長野も15番でボギー)で迎えた最終18番ホール。これまで経験したことのない大ギャラリーに緊張はピークに達した。ドライバーショットはプッシュアウト。第2打はバンカーにつかまった。このバンカーショットをホームランさせてグリーンオーバー。左足下がりのラフからのアプローチショットはエッジで止まってしまった。ピンまで2メートルにまでボールを運ぶのに5ストロークを費やしていた。
「頭の中が真っ白になるって、あのことだったんですね。これまで、あれほど緊張させられたことはありませんでした」
初出場で初優勝。現実が近づくほど増した緊張感であった。2メートルを2パットでダブルボギー。同じ組で回った長野、先に2アンダーパーでホールアウトしていた吉田優利(麗澤中学2年)に1打差で辛くも逃げ切った。
「これからは、緊張した場面でもいつも通りのプレーができる選手になりたい。そういう意味でもいい経験になりました。優勝した嬉しさよりも、その思いの方が強いです」。
目標にするのはプロの成田美寿々で「アイアンのコントロールショットの上手さに惹かれる」そうだ。いずれ、同じ土俵でプレーすることを夢見ている。河野は、いま、その入り口に立った。
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