通算1アンダーパーの首位でスタートした松田唯里(福井工業大学2年)が、この日は1バーディ・5ボギー・1ダブルボギーの6オーバーパー78と苦しみながらも通算4オーバーで優勝した。「すごい、疲れた」がホールアウト後の第一声。1番から4番までが鬼門という彼女は、2番ボギー、4番では第2打を崖下に落としてピンチに陥ったが、そこからグリーンに何とか乗せて5メートルのパーパットをねじ込み、切り抜けた。「これで落ち着いた」と思ったものの、8番(パー4)では第2打をアドレナリンで「飛ぶと思ったので、1番手短いクラブで打った」にもかかわらず、グリーンオーバー。3打目のアプローチも乗らず、4打目は「下りの傾斜が怖くて」打てず、2メートルのパットを残してしまい、結局このパットを外してダブルボギーとしてしまった。
このあとも9、12、14番とボギーが続き、この時点で通算4オーバーパーと2位の井上りこ(大手前大学3年)に並ばれた。「井上さんはショットが良くて、ピンにつけてきた。それに比べて自分はピンに寄せきれず」後半は苦しい展開となった。「優勝を意識したわけではないが、朝から地に足が着いていない状態」で緊張感はあったようだ。思うようにならないショットの不調に「どうやって切り替えようか」とばかり考えていた。
そんな中この日、彼女の唯一のバーディが16番(パー3)で来た。ユーティリティーの5番であわやホールインワンか、というショットを見せ、バーディ。いったんは1打リードした。だが、楽には勝たせてくれない。次の17番(パー5)で第3打を奥のバンカーに入れてしまい、ボギーとしてしまう。再び2人が並ぶ。
最終18番(パー4)では、第2打を松田がピン手前7メートル、井上がピン奥2メートルにつけた。松田は「下っていたので、あわせていった」バーディパットは、タップインパー。終わってみれば、この「先に入れたのがよかった」というのが勝敗を分けた。井上のバーディパットは、カップを1メートルオーバーし、誰もがプレーオフかと思っていたが、彼女のこの返しのパットは無情にもカップのフチに蹴られてしまった。
プレーオフを覚悟していた松田の優勝が決まった。「この試合の前に父が優勝スコアは3オーバーと予想していたので、イーブンパーを目指していた。もう少しいいスコアで、かっこよく」優勝したかった。そこには「高校を卒業してすぐプロになる」傾向が強くなっている女子アマチュアゴルフ界で、「大学でもアンダーパーで優勝」することで大学女子のレベルを顕示したい思いがあった。残念ながら通算4オーバーパーでの優勝に「このスコアで優勝できると思われるのは」忸怩たるものがある。本人が「プレー中に笑顔がなかった」と振り返るように納得できる優勝ではなかったかもしれない。
それでも胸を張ってもらいたい。勝負は非情である。勝つものは一人、出場したほとんどの選手が敗者となる。だからこそ、勝った者には喜んでもらいたいし、その価値がある。
彼女が笑ったのは、日本女子オープンゴルフ選手権の出場権を獲得したと思い至ったときだ。今年は彼女の地元、滋賀県の琵琶湖カントリー倶楽部が舞台となる。「地元なので、すごくうれしい。頑張ろう。出たかったんですけど、日本女子アマではベスト8どまりで、出場権が取れなかった(ベスト4までが日本女子オープンの出場権獲得)」だけに、喜びもひとしお。最後には「来年は連覇したい」と満面の笑みだった。
|