イーブンパーで首位タイに並んだ宇都宮正喜(美加ノ原)は、2005年の日本シニアゴルフ選手権に出場して以来、毎年のように全国大会に出場してきた。その宇都宮がミッドシニア初出場で初優勝に向けて好スタートを切った。10番ホールからティーオフした宇都宮は、14番で9メートルから3パットのミスでボギーが先行するも、16番(パー3)で176ヤードのティーショットを6番アイアンでピン6メートルにつける。「直角に曲がった」という強烈なスライスラインをねじ込んで、前半をイーブンパーで折り返すと、後半も1番(パー5)で残り50ヤードのサードショットをサンドウェッジで「OKの距離」につけてスコアを伸ばす。直後の2番ではセカンドショットを左バンカーに打ち込んでしまいボギーを叩いたが、その後は、盤石のプレーでパーを積み重ねて見せた。1949年生まれの宇都宮。65歳となっても、アイアンの飛距離は往年と遜色がない。180ヤード超のパー3で6番アイアンを手にするのには恐れ入る。さらに、「ショットの調子は良かった。納得がいく」と再三バーディチャンスにつける切れ味鋭いショットは、出場選手の中でも屈指のものだろう。しかし、苦しめられたのは、奈良国際ゴルフ倶楽部のグリーン。「1メートルから2メートルのチャンスが5回はあった」という宇都宮だが、これを悉く決められず、イーブンパーに終わり、好スコアにもやや不満顔。「朝は昨日の雨の影響からグリーン面も水を含んでいて、思ったよりも重たかった。天気も良くて、少し風もあったから後半は少し早くなるだろうと思っていたけど、思ったほどではなくて…」と、傾斜のきついグリーンと芝に思い悩む1日となった。それでも、「たくさんの競技に出ているけれど、初出場はやはり新鮮ですね」と、フレッシュな気持ちで臨む本選手権。「優勝争いはアンダーパーになる。パットさえ決められれば、自分も良いスコアは出せると思う」と、初出場初優勝に意欲を見せた。
1打差3位につけた真鍋高光(大博多)は、宇都宮と異なり、明日の優勝争いは「我慢の仕合になると思う」と、読んでいる。2番ホールで9メートルのバーディパットを「スライスラインだったけれど、思ったより強めにヒットしてしまった」というが、ホールの土手に当ててカップインしてバーディが先行。幸先の良いスタートを切ったと思われたが、真鍋本人は、「ショットの調子が悪くて…」と、不安なプレーを続けていた。その不安が的中したのが7番。4番ウッドでティーショットをレイアップ。「このホールは、グリーン右サイドに行けば、無難にパーをセーブできる」とマネジメントしていながら、7番アイアンの2打目は思わぬミスでグリーン左バンカーへ。このホールをボギーとした真鍋は、どこが自分のショットに自信が持てなくなっていたのかもしれない。12番で5メートルのスライスラインをねじ込んで再びアンダーパーの世界に足を踏み入れたにも関わらず、14番で1メートルのパーパットを外してボギー。17番では、ティーショットの当たりが悪く、ボギーを喫してしまい、1打差3位と好位置ながらも、スコアを伸ばし切れず悶々とした1日となってしまった。「今日はホールロケーションが難しくて」と、苦笑いの真鍋。昨年大会では、赤間と最後まで優勝争いを演じた末の1打差2位。2009年の日本シニアでも優勝の諏澤一に最終ホールでチップインバーディを奪われ、プレーオフの末に苦汁をなめた。2度の優勝のチャンスを逃した真鍋は、「メンタルが弱いんですよ」と自虐的な笑みを漏らすが、本心はこのチャンスをものにしたいだろう。
明日の優勝争いを、ショットが好調で「スコアの伸ばし合い」と読んでいる宇都宮と、ショットが不調ながらパットに救われ「明日は我慢の試合展開」と目論む真鍋。好対照な二人に、首位タイの近藤正耿(北九州)、2オーバーパーの木下幾英(球磨)の最終組から混戦を抜け出し、賜杯を手にするのは誰であろうか。
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