髙橋雅也(川越)の最終ラウンドは、終始落ち着いたペースでプレーが進んでいった。3打差2位の水上晃男と5打差3位の寺西明との最終組。髙橋は2番で3パットのボギーを叩いたが、その後はショット、パットとも「セルフコントロールをして、メリハリをつけたプレーを」と話していた言葉通り、危なげなくパーを積み重ねる。この日最初のバーディは10番(パー5)。左ラフから残り80ヤードの3打目は、ディボット。球はディボットの一番グリーンよりについてしまい「クラブヘッドが入る隙間が無かった」という難しいライだった。髙橋はこのショットを「無理にピンを狙わず」に振りぬくと、このショットが髙橋の想像を覆しピンを刺す。この難
ショットを1.5メートルにつけた髙橋は、スタート時のスコアに戻して、水上との差を再び3打に広げる。しかし、髙橋の苦難は続く。11番(パー3)では、ティーショットを左のカラーに運び、バーディパットは強烈な下りのフックラインに乗って、2.5メートルもオーバーしてしまう。髙橋は、このパーパットを「3パットはしょうがない。でも、4パットだけはしないようにと思っていた。救いは、上りの軽いフックラインと、しっかり読めたことだけ」とタッチだけを合わせて打つと、見事にカップに沈んだ。14番は3パットのボギーで水上に2打差に詰め寄られたが、それでも、髙橋に焦りはなかった。14番で2.5メートルのバーディパットを外しても、髙橋の心に波風は起こらなかったという。
正規のラウンド中に唯一、髙橋が「焦った」と感じたのは、15番。髙橋のティーショットは右の木に当たりOBゾーンに消え、「暫定球を打つ時、2連続だけはヤバい」と、気持ちにさざ波が立ったが、このショットをフェアウェイに運んだ髙橋は、どうにかダブルボギーで堪える。しかし、このホールで髙橋は水上と同スコアで並んでしまい、優勝争いは混戦模様に。その後、髙橋がパーを積み重ねたのに対して、水上が17番(パー3)でダブルボギーを喫し、髙橋が2打リードで最終ホールを迎えた。「正直、水上さんしか見ていなくて、最終ホールをパーで終えられれば…」2度目の優勝だと思っていた髙橋は、「今日のホールロケーションと水上さんとの差を考えて…」ティーショットで7番アイアンを手にした。ハザードの手前にレイアップした髙橋は、2打目も7番アイアンでピン横2メートルにナイスオン。バーディパットは外したものの、パーで終えた高橋は、優勝できると思っていただろう。しかし、1組前でプレーしていた二宮慎堂が通算3アンダーパーで先にホールアウトし、優勝争いは、予想外のプレーオフに持ち込まれた。
18番ホールの繰り返しで行われたプレーオフ。2ホール目に二宮がボギーを叩き、髙橋が優勝を決めたが、このプレーオフは2度ともティーショットでドライバーを手にした。「正規のラウンドで寺西さんがドライバーでティーショットを打って。そのランディングポイント、風の向きを考えたら、ここは自信を持ってドライバーを打てると」冷静な判断と、果敢な攻めが光った。
「今日は、3パットでボギーが先行しましたが、ラインの読み間違いをしただけで、しょうがないと割り切れました。このホールロケーションなら、他の選手も苦しいだろうと思いましたし。自分のゲームプラン、セルフコントロールをしっかりやりきろうと思っていましたし、それが出来たと思います」と、2度目の優勝杯を手にした髙橋は胸を張る。「第2ラウンドの68は大きかったですね。ノーボギーでしたし」と優勝のカギを握った昨日のプレーを振り返る。それを実現させたセルフコントロールを優勝争いの中でもやりきったことは、「今日のゴルフは自信になる」と、笑顔を見せる。「ここ数年、上位で優勝争いをしながら、自滅というか…気負い過ぎて優勝することが出来ませんでした。今日は、トップに立って、相手につけ入る隙を与えないプレーがしたいと思いましたし、最後はちょっと追い込まれましたが、ほぼやりきることが出来ました」と、また一歩、階段を登ったと実感している。
果敢な攻めと、乱れない心。混戦とはなったが、髙橋の強さが際立つ最終ラウンドだった。
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