膠着状態の序盤から勝負が動き出したのは5番ホールからだった。勝が如才なくパーでまとめたのに対して、佐渡山理莉(オリオン嵐山GC)はラフに打ち込んでのボギーにして勝の1アップ。7番でも同じパターンで勝の2アップ。9番(パー5)では佐渡山がバーディを奪ってホールを取り、勝の1アップで後半にターンした。
ここから勝負の流れは急激に勝に傾いていく。
10番で佐渡山がボギーにして勝の2アップとなると、続く11番(パー3)では、勝が8メートル近いバーディパットをねじ込んでリードを広げた。さらに12番では佐渡山がボギーで4アップに。勝の3連続アップであった。直後に流れの変わりそうなシーンが待っていた
。
13番(パー4)だった。勝のドライバーショットは大きく左に曲がり、前方に木が立ちふさがるラフに。低く打ち出しての脱出を図ったがフェアウェイにまで出ることなく、グリーンまで50ヤードほどのラフで止まった。一方の佐渡山はフェアウェイからの第2打を4メートルほどに2オンさせていた。ラフからの勝の第3打は、ピンまで3メートル。
佐渡山のバーディパットが、はずれた。「相手がチャンスを逃してくれた。ここで、こちらがミスしたら、相手の気持ちを楽にさせてしまう。そうなると、一気に流れがかわることになるかもしれない。絶対に決めなければ…」
強く自分に言い聞かせていた。勝は、このシーンをここ一番の勝負どころ、と読んでいたのだ。そして、カップ真ん中から決めた。
そういえば18番ホールまでオールスクウェアのままもつれ込んだ準々決勝でも、最後に下りスライスの4メートルを沈めてガッツポーズを見せていた。このときも、ここ一番での集中力と実行力を如何なく発揮したものだった。
もう流れが変わることはなかった。14、15番と分けて、そのまま勝の4and3で決着した。
準々決勝までは苦戦の連続だった。決勝にまで勝ち上がったことに「自分でもビックリです。ゴルフの内容には、納得できないままですから」。でも終わってみれば勝ち上がっている。マッチプレーでは、こうしたことが起こりうる。「ショットが曲がっても、リカバリーがうまくいっていたり、難しいパットが決まってくれたり…で、大崩れはしていないですよね。今日は3パットも1度もない」
こういう展開は、相手にとっては嫌なゴルフに映る。勝てそうで、勝てない。期待を抱かせて、はぐらかされる。もちろん、勝は意識してこういうゴルフをしてきたわけではないだろうが、結果的にマッチプレーらしいゴルフが展開されてきたのではあるまいか。“勝ちに不思議の勝ちあり”である。
「なんかマッチプレーの戦い方がつかめたような気がします」とは、決勝に勝ち上がった直後のコメントであった。
敗れて3位決定戦に臨むことになった佐渡山は「準決勝では、自滅してしまったので、そこを反省してもう少し丁寧なゴルフをします」。沖縄の中学3年生は、必死に自分に言い聞かせていた。
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