比嘉一貴は、スロースターターと呼ばれている。尻上がりに調子を上げて、いつの間にか優勝争いに加わっているというタイプである。その比嘉の、まさに面目躍如といえるプレーだった。前半を36で折り返し、後半は、なんと30の66でホールアウトし、いつの間にか通算1オーバーパーから一気に首位タイとなる4アンダーパーのポジションにつけた。
前半、3、9番でバーディ。5番で、ダブルボギーのパープレー。そして後半は、圧巻だった。10番で、バーディを獲ると、11番は、イーグル。12番、バーディ。そして17、18番とバーディの猛ダッシュ。
「うーん。でも、ティーショットが良くないんですよ。みんな右に出るんです
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。ですから、今日は、アプローチとパットで凌いだというラウンドです。天気も良くて風も吹いていないので、みんなスコアは伸びると思っていた。5番のダブルボギーがあったから、後半の30があったんですけど、やっぱり終わってみるともったいない。内容はともかく調子とスコアがあっていない。たまたま。まだ調整して、自信をもって狙うといえるようにしたい」と語った。
5番のダブルボギーは、右からドローで狙ったのに、クラブフェースが開いてしまい、右の池へ。
「もともと僕は、ドローヒッターなので、右向いて構えるんです。ところが今日は、そのドローが出ない。ボールが右へ行っちゃうんです。つかまらないからフェード気味になるわけですから、右向いて右に飛ぶのは困るんで、左に向いて構えようとしました。結構、苦労しながら立って(スタンスして)いたんです」
比嘉のいいところは「あ、今日は、こういう日かな」と切り替えてゴルフをアジャストできるところだ。それでも、自分としては納得がいかない。スコアは66とつくれたけれど、ボールが捕まらない自分のショットの状態が、気がかりなのだ。
「ほんとは、64の8アンダーパーを狙っていたんですけどね……」と、ポロリと本音を吐いた。
捕まらない日ではなく、フェードの日と切り替えて、それが功を奏したのが、11番(パー5)だった。第2打。残り258ヤード。風は左から。「フェード気味の球筋で狙って、イメージ通りに行ってピンまで4メートルに2オンしました。それを沈めてのイーグルです」と、フェードボールが大いに役立ったわけである。
「明日(最終ラウンド)もこれくらいのスコアが必要で、第1ラウンド、第2ラウンド、第3ラウンドとショット的にはよくない状態なので、うまくイメージを調整できればいいですね」という比嘉に、一抹の不安要素がある。「こういう展開で、いつも2位なんですよねぇ」と呟く。
比嘉は、この日本アマでも涙をのむ2位を2回経験している。1度目は、2012年大会の奈良国際GCで(マッチプレー)小袋秀人に敗れてランナーアップ。そして、2014年大会の利府GCでも36ホール目まで競り合っていたけれど1downで敗れてのランナーアップ。さらに、昨年の日本学生でも2位。主な戦歴を振り返ると、2位が9回(JGA戦歴記載調べ・2007年沖縄ジュニアの2位から)ある。
「今回も、そうならなければいいんですけど…」と、また呟いた。いや2位も9回あるけれど、優勝(個人)は、その倍以上の22回もあるのだから、最終ラウンド、上を向いて闊歩して欲しい。
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