昨年大会、最終ラウンドの18番ホール。ティーショットを打つまで、主役を演じていた選手がいる。阿久津未来也(日本大学4年)。最後の日本学生に臨んだ阿久津は、首位と3打差の5位タイで最終ラウンドをスタートした。「日本学生での借りは、日本学生で返す」その強い気持ちが、これまで苦手にしてきたスライスラインのパッティングを冴えさせる。2番(パー3)で6番アイアンのティーショットをピン奥8メートルに乗せると、下りのスライスラインを読み切ってバーディが先行する。7番(パー5)では、サードショットのライが悪く、「気持ち悪い」ボギーを叩いたが、9番では120ヤードのセカンドショットをピンに刺し、バーディ。前半で
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1つスコアを伸ばし、最終組の佐藤への追撃態勢を整えた。後半に入ると、11番で2メートル、12番(パー3)では4メートルの下りスライスを決めて連続バーディ。14番(パー5)の2.5メートルのスライスラインもねじ込んで見せた。
この時点で、佐藤には肉薄していたが、阿久津本人は、「佐藤選手のプレーは、全く分かりませんでしたし、気にしていなかった」と目の前の1打への集中は変わらなかった。それが、難関の17、18番のパーセーブに繋がり、この日66のベストスコアを叩き出し、通算4アンダーパーまでスコアを伸ばして、佐藤のホールアウトを待つことになった。
その佐藤は、17番でボギー。18番もまさかのボギーを喫し、阿久津の手に日本学生ゴルフ選手権のタイトルが渡ることになった。
「正直、優勝の実感はありません」そうはにかむ阿久津の言葉は本心だろう。昨年のリベンジを果たした喜びはもちろん大きいが、高校1年生の時の関東ジュニア以来の優勝は、また、阿久津に戸惑いも生まれさせた。
しかし、昨年からの阿久津のゴルフの充実ぶりは目を見張るものがある。「日本アマよりも日本学生に勝ちたかった」同年代でしのぎを削るライバルたちを目の前に、昨年の悔しさを晴らすために積み重ねてきた日々が、「今日は65を目標にしていましたが、それには届きませんでした。でも、100%の力で頑張り抜くことが出来ました」と最後の最後で思う存分のプレーに繋がった。
「初めての全国タイトル。もしかしたら、他の人から見れば、ただの1勝かもしれませんが、この勝利は自分にとって本当に大きいです」日本学生のタイトルホルダーを見れば、日本大学で一時代を築き、プロフェッショナルゴルファーとしても活躍する選手が名を連ねている。「自分もその中の一人になれたことを嬉しく思いますし、プロとして先輩たちの後に続いていきたい」そう静かに話す阿久津。名前の通り、未来に繋がるタイトルを手にして、勇躍、次のステージに踏み出していく。
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