最終組の新垣とは4打差、佐渡山とは2打差で迎えた安田祐香(洲本GC)は、こんなことを考えていた。「最終組の二人はスコアを伸ばしてくる選手だから、自分も精いっぱい伸ばさないと追いつけない」。スコアを伸ばすためには、何が大切か。安田は、そのことも考えていた。「1、2番はバーディをとりやすいホールだから、バーディを先行させて難しい3、4、5番を終えてアンダーパーにしておけば、そこから流れを作れる。あとは、どこまでスコアを伸ばせるかというペースをつかめる」。
実際に1番のバーディの後、5番を終えて1アンダーパーと思い描いていた通りの流れをつかんでいた。そして6番で3メートルを沈めると、9、10番
を連続バーディにして、この時点でトップだった1組後ろの佐渡山に並んだ。さらに12、13番でまたもや連続バーディを奪い、一気に単独トップになり、差を広げた。17番をボギーにしたものの最終18番(パー5)を2オンさせ、10メートルほどの下りイーグルパットをカップ真ん中から決めて通算14アンダーパーにまでスコアを伸ばしてホールアウトした。
実は、このとき、安田は、逆転優勝をほぼ確実にしていることは知らなかった。スコアカード提出所のあるクラブハウスに向かうところに関西のゴルフ仲間がいた。
「どう、最終組は?」
「伸びていないよ。おめでとう。優勝だよ」。
いい線までいった。そんな思いはあったが、まさか逆転しているとは…。自分でやろうとしていたことができた。やり抜いた。そんな満足感にこれ以上ない喜びが加わり、スコアカード提出所に向かう足取りがはずんだ。
7歳でゴルフを始め、小学3年生から坂田塾で本格的にゴルフに取り組んだ。
中学2年で出場した日本ジュニア(12-14歳の部)で2位。高校進学後も、その実力は高く評価されていた。昨年12月、関東、関西ゴルフ連盟はじめとする8地区連盟強化指定選手チーム対抗戦が行われた。安田は、古江彩佳、西村優菜とともに関西ゴルフ連盟チームに選ばれ、チーム、個人ともに優勝した。選手強化策の一環としてのイベントだったが、個人優勝者には、今年3月にオーストラリアで開催されたナショナルチーム派遣競技への出場が付帯されていた。
関西ゴルフ連盟の強化選手ではあったが、ナショナルチーム入りにはポイント不足だった安田には、貴重な経験だった。ここで技術面ばかりでなく、スコアメイク術、コースマネジメント法などを学んだことが、日本女子アマの舞台に生かされることになった。
「負けず嫌いで、負けて泣いたことは何度もありますが、うれし涙は、初めてです」
優勝スピーチで声を詰まらせた安田は、ホールアウト直後に待っていた吉報のシーンをこう振り返った。この優勝で、日本女子オープンへの出場権も獲得した。
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