通算10アンダーパー、2位のカイル・ミシェルと3打差で最終ラウンドを迎えた大澤和也(グリーンヒル瑞浪)は、スタート前の気持ちとして「3日間フェアウェイキープを優先してプレーして来たから、リードを気にせずに、その感じで行こう」と思っていた。その思いが、逆にスタートしてから守りのゴルフを誘発してしまったのかも知れない。
3、4番、そして6、7番とボギーで、あっという間に通算6アンダーパーまで落としてしまい、混戦を招くことになった。「あ、攻めないといけないなぁ。守っていたら勝てないな、と思って、ドライバーを手にして8番ティーインググランドに上がりました」そこで、1メートルを沈めて、ようやくバー
ディを奪った。
後半に入ってからも「バーディチャンスは何度かあったのですが、なかなかとれないでずっとパーが続きました」それでも、大澤を支えていたのはショットの安定感だった。16番で、待望のバーディがきた。そこで通算8アンダーパー。今野が通算9アンダーパーで、ミシェルと大澤が並んだ。ちょうど中島啓太が、17番でダブルボギーを叩いた直後だった。
17番にやってきて、ミシェルがダブルボギー。今野がボギーとして、通算8アンダーパーは、大澤と今野だけになった。
「プレーオフもあるかも知れない。それもいい経験になるな、と思っていたんです」と、切羽詰まっている状況でありながら、別の自分がどこか余裕というかゆとりを感じていたのだろう。それでも、18番は、さすがに「緊張して、とくに(優勝が決まる)最後のパーパットは、とりあえずタッチを合わせつつ狙って行こうと思いながら打ちました」と語った。
そんな大澤のどこか余裕を感じさせるゆとり感が、彼の持ち味なのかも知れない。両親も姉も、ゴルフはまったく無縁である。愛知県で実は、いま話題の中学生棋士の藤井聡太四段とは「たぶん自転車で行ける距離かも」というご近所さん。そして、大澤が、ゴルフを始めたきっかけは、なんとテレビゲームの「みんなのゴルフ」から興味を持ったという。それが10歳のときだ。ゴルフゲームが好きになっていたら「父親が知り合いからクラブを借りて来てくれて始めたんです。中学のときはサッカー部でしたから(笑)」
日大ゴルフ部の有望選手。同大の日本アマのタイトルは、9年前の大会で阿部祐樹が優勝して以来である。爽やかで、礼儀正しい新チャンピオンの誕生だった。
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