「朝の気づき」と「日本女子アマでの経験」。吉田優利は、その二つを勝因に挙げた。朝の気づきとは、スタート前のドライビングレンジでのことだ。前日までパラッパラの状態だったというドライバーショットだったが、ボールを打ちながらあれこれ修正しているうちに「ダウンスウィングで少し右肩が下がりすぎているんじゃないかと思い、少しクラブヘッドを上から入れるようにしたら、それでようやくレベルにヒットできるようになって、ほとんど狙ったところに打てるようになりました。ベストの状態を10とすれば、きのうまでは5だったのが…。
最終組での政田との優勝争いは接戦だった。前半は、ともに1、8番をバーディにして通算7アン
ダーパーでトップを並走した。後半に入った10番で政田がバーディを奪い、12番では吉田がボギー。両者には2打差がついた。日本女子アマでの経験といったのは、吉田の、ここからのゴルフであった。
「日本女子アマでもビハインドの状態から再逆転できました。それがあったので、焦ることもなく、冷静でいられました。で、考えたんです」。考えていたというのは、残りホールを頭の中に描き、どこでバーディを狙えるか、獲れるかということだった。答えは14番(パー5)と15番、17番の距離の短いパー4ホールだった。
13番で政田がボギーを叩き、吉田が1打差で追う展開に変わって迎えた14番(パー5)。第2打をピンまで100ヤード地点にレイアップし、52度のウェッジであわやカップインの10センチにつけた。驚くのは、まだ早い。続く15番(パー4)の第2打も100ヤードを同じ52度で、これまた10センチに。さらに17番(パー4)は58度のサンドウェッジでまたまた10センチにつけた。計算通りのスコアメイクと狙い通りの3バーディで政田をとらえ、引き離して優勝が決まった。
同一年での日本女子アマ、日本ジュニア(15~17歳の部)ダブルタイトル獲得は、2003年の宮里藍以来史上3人目の快挙だ。
このあと、8月29日からアイルランドで開催されるエスピリトサントトロフィー世界女子アマチュアゴルフチーム選手権が控えている。吉田は安田祐香、西村優菜とともに日本チームメンバーとして出場する。「ヨーロッパもリンクスコースも初めてなので、楽しみです。3人で力を合わせてチーム優勝を狙います」。
日本女子オープンのことを考えるのは、それが終わってからと決めている。昨年は女子オープンへの出場を逃し、悔しい思いをしている。今年の舞台である千葉CC野田コースは関東ジュニアでラウンド経験があり、地元ということもあって得意なコースだという。現在は、日本女子オープンについては、そこまでで思考回路を止めているそうだ。
テレビ観戦したという全英女子オープンでの比嘉真美子の戦いぶりも頭に残っている。比嘉とは、同じコーチの元で練習している。「あの飛距離があれば、世界でも戦えるんだ…と思いました。私も将来の夢は世界のツアーで戦うこと。やるべきことは、まだまだ、たくさんあります。ええ、発展途上人ですから」。
ダブルタイトル獲得にも、吉田は有頂天になることなく、じっと先を見据えている。
|