降りしきる雨の中、和久井麻由は、不穏なスタートを切った。1番のティーショットが、いきなり大きく左へのミスとなって左の深いラフに飛び込んでいった。2番は3パットで連続ボギーとなった。「1番ホールは、あわててしまって、下半身の切り返しが早くなってしまいました。2番はファーストパットを打ちすぎてカップを大オーバーしての3パットです。連続ボギーには、正直、焦りました。“今日は、どうなるのだろう?”って」。
救いは、2番ホールのドライバーショットをタイミングよく振れたこと。雨、風の中でのプレーは、嫌いではないという。「最強の雨女」を自負しているくらいだから、そうした天候の下でのゴルフには慣れっこに
なっているのだ。「3番で開き直りました。第3ラウンドからビビっていてどうする。曲がってもいい、3パットしてもいいから、もっと積極的にプレーするように自分に言い聞かせたんです」。5番(パー5)で第3打、30ヤードのアプローチショットをピンそばにつけて初バーディを奪い、前半は1オーバーパーで後半へと入っていった。
和久井には、いま尊敬している女子プロ選手がいる。河本結が、その人である。「結さんのゴルフを見ていると、感動するんです。攻めることを怖がらないし、本当に積極的で強気なプレーを続けるじゃないですか。トーナメントで顔を合わせると、よく話をさせていただけるようにもなりました。自分は怖がりで、すぐ守りに入ってしまうタイプなので、結さんのプレースタイルには憧れます」。
さて、和久井の後半のプレーだ。12番(パー3)。突然、雨、風が強くなった中で躊躇することなく8番アイアンを振り切った。4メートルについた。パットも強めにヒットしてボールをカップに飛び込ませた。続く13番はフェアウェイから135ヤードの距離を9番アイアンで5メートルに。これも、強気にカップ真ん中から決めた。15番は3番ウッドでティーショット(第2ラウンドには、ドライバーで打ってラフに打ち込んでいる)。フェアウェイをとらえておいての第2打勝負。1メートルについた。さらに17番(パー5)でもバーディを奪って69をマーク。通算14アンダーパーにまでスコアを伸ばし、2位に2打差をつけてトップの座を守った。
話は、最終ラウンドへのプレーへと進む。「ちょっと複雑です。今、自分の中でせめぎ合っていることがあるんです。もう、今から緊張している自分と、“結果を気にせず、ガンガン攻めろ”という自分がいるんです。結さんからインスタグラムで“頑張れ!”と励まされました。そのこともあって、ただ憧れているだけでなく、自分でもやってみよう、という気になりかけているところです。寝て起きたら踏ん切りがついていた、という自分の気持ちになることを期待します。ちょっと待ってください。今、決めました。ガンガンいきます。そうなった自分の最終ラウンドがどうなるのか。それを楽しみに、攻めます。そういえば、これまで最終ラウンドにゴルフを楽しんだことってないんです。よし、絶対に楽しむぞ」。
明日の和久井は、第3ラウンドの延長になるのか。それとも緊張が顔を出してしまうのか。ここを通り抜けたとき、新たな世界が広がっているように思える。
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