単独首位でスタートした手塚彩馨だったが、スタートホールをボギーにしてつまづくと、3番では3パットでスコアを落としていく。続く4番(パー3)ではバウンスバックをきめたものの5番、7番とまたまたボギーを叩き、スタートの通算9アンダーパーから通算6アンダーパーにまで後退した。ショットが安定せず、ラフに打ち込むシーンが多かった。
後半に向かう道すがら、手塚は、キャディを務める母親の美佐子さんに声を掛けた。
「なんか変なんだけど…」
母親からは、こんな返事があったという。
「ラフからばかり打っているから、力が入り過ぎているんじゃないの?力を抜いて振れば」母親の指摘通りだった。力まずに振る
ように心掛けたら、ショットの調子が一変し、身上とする正確性が戻ってきた。10番ではドライバーショットで確実にフェアウェイをとらえられた。第2打も2メートルにつけて、この日初めて「つながりの良いバーディ」を奪うことができた。これですっかり力みも抜け、ここからは第2ラウンドまでの自分を取り戻してのプレーが続いた。
13、14番は連続バーディ。最終18番(パー5)もバーディで締めくくり、前半の39から後半32と大きく切り替わるゴルフで通算10アンダーパーとスタート時点より1打伸ばしてのホールアウトとなった。
「前半では、自分でもどうなることかと思いましたけど、うまく立ち直れました。母のおかげですね」美佐子さん自身のゴルフ歴は「趣味程度です」とのことだが、中学生時代から競技に出る娘に付き添い、キャディも務めてきた。技術的なアドバイスをすることはなくても、見守り続けてきたことで好調時の動きは目に焼き付いているのだろう。違和感があれば、すぐに気づくそうだ。
2位に1打差をつけて迎える最終ラウンド。手塚はここでも力みのない気持ちを明かした。「周りを気にせず、自分のやるべきこと、やれることをやっていくだけです。でも、今日よりは良いスコアでまわりたいですね」。
2019年の日本ジュニア(女子12~14歳の部)ではプレーオフで敗れて2位に終わった。本選手権でその思いを晴らせるなら、これ以上のリベンジはない。「あの頃着ていた服は今も持っていて、(体の)サイズも、ほとんどあの頃のままですからいまでも着られるものは着ているんです」小柄なまま幼顔のままの手塚をみていると日本ジュニアの頃にタイムスリップしたような気にさせられる。
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