「優勝は考えていなかったので、ホールアウトして最終組の結果を知らされてビックリしました。実感が湧いてこないんです」。
4打差を逆転しての本選手権3度目の挑戦で待望の優勝を果たした尾関彩美悠は、喜びよりも驚きを先に言葉にした。岡山作陽高校の3年生。あの渋野日向子の後輩である。尾関の姉(沙綾さん)が、渋野とは学校は違うが同学年でゴルフを通して交流があったことで、尾関も何度か顔を合わせたことがある。尾関姉妹での渋野の呼び名は「ひなこちゃん」。
「私は学校ではひなこちゃんとは入れ替わりで接点はなかったのですが、偉大な先輩で、みんなの憧れ、目標になっています」。
さて、日本女子アマ最終
ラウンドである。尾関は自分のゴルフを「負けず嫌いの攻撃型」だという。しかし、今日は雨のコースにきて、さらに手渡されたホールロケーションをチェックして、冷静に戦略を立てていた。ピンを責めるのではなく、確実にパーオンさせて2パットのパーをベースにする。狙えるところに乗ったら、そこはしっかりカップインを狙う。
1番バーディと幸先の良いスタートが切れた。それ以降は、11番まで1ホール(9番)を除いてすべてパーオンで2パットのパーを続けた。そして12番で2ホール目のバーディを決めた時点で3選手が並んだ中のひとりになっていた。そこから14、15番の連続バーディでひとり抜け出した。この連続バーディにも伏線がある。実は第3ラウンドにフックラインが全く決められずにコースに残って1時間以上練習グリーンでフックラインを徹底して打ち続けていた。
唯一グリーンを外した9番では2メートルのパーパットを決めたが、これがフックラインだった。そして、12、14、15番と勝負のバックナインで奪った3バーディも3~4メートルのフックラインであった。「昨日の練習でタッチが合うようになっていたので、フックラインのバーディパットは自信を持ってストロークすることができました」
結局、この連続バーディが決め手となっての初優勝となったのだが、それと知るまでに、尾関は大きな満足感に包まれていた。最終ラウンドの優勝争いのなかでやってのけたノーボギーのラウンド。目標にした60台(68)のスコアをクリアしたことで得た自己完結型の満足感である。JGAナショナルチームのウェアに身を包んでのラウンドが誇らしかったという。「やっぱり、これを着ると頑張ろう、代表にふさわしいゴルフをしよう、という気になります。中学3年で初めて日本女子アマに出場した時、ナショナルチームの先輩たちがお揃いのウェアでプレーしているのを見て“格好いいなぁ”って思ったんです。自分は高校に進学してからナショナルチームのメンバーに加えてもらいました。以来、このウェアを身に着けると、なんか自信が湧いてくるんです」。
高校生活最後になって日本女子アマで優勝できた。重い優勝カップを贈られ、それを両手で大切に持ったとき、尾関は、この優勝を初めて実感できたという。祖父母、両親、姉…ゴルフ一家である実家に戻れば、盛大な祝勝会が待っている。
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