「こんな大きな大会で優勝できて、本当に光栄です。(優勝したという)実感は、まだないんですけど、自分が考えていたゴルフは3日間続けてできたかな…という満足感、充実感はあります」
越田泰羽は、優勝カップを抱えて、そう口にした。「自分は、順位を気にすると、自分を追い込んでしまうので、とにかく全てのショットで“気持ちよく振ること”をテーマにしてプレーしました。だから、優勝は、テーマをクリアできた自分へのご褒美なんだと思います」
そんな越田が、順位を気にしたシーンが一度だけあった。第3日のラウンド後半になってからだった。日本ジュニアでは、コースに速報版が設置されていない。ホールアウトするまで
、自分のポジションはわからないのだが、16番ティーイングエリアにきたとき、流れが詰まっていて、まだ前の組がいた。そこには、15番ホールまで5バーディ(ノーボギー)を奪う猛チャージを仕掛けていた上久保がいた。
実は越田と上久保は6月の日本女子アマで第1日、第2日と同じ組でラウンドし、それを機に仲良くなっていた。そこで、越田は、上久保のスコアを聞いた。なんと、9アンダーパーまで伸ばしていた。「自分とは2がある。残り3ホールで追いつけるように頑張らなければ…。ちょっと自分にハッパをかけました」と越田。
ハッパはかけたものの、最後までパーが続く。ところが、前の組では、予想外のことが起こっていた。上久保が16番バーディで10アンダーパーにまで伸ばしていたのだが、17番パー3でトラブルとなってダブルボギー、さらに18番もボギーにして、一気に7アンダーパーにまで後退した。
「18番でパーパットをはずしたのは、自分の第2打地点から見届けました。自分がパーならプレーオフかな…、よし、パーをとろう!」
再び気合を入れ直し、難しい18番をパーでホールアウトし、予想通りにプレーオフに突入した。1ホール目は、両者ボギーにして、2ホール目(14番)。越田はテーマ通りの気持ちの良い振りでフェアウェイをとらえると、第2打地点で狙いを決めていた。「このグリーンで今日のピンポジションは手前になっている。右サイドに乗せれば、一番やさしいラインになるな…」
第2打は、狙い通りにピン右3メートル弱についた。そして、先にファーストパットを打ち、カップをはずした上久保が見守る中、真ん中からウイニングパットを沈めたのだった。
この後の越田には、JLPGAプロテストが待っている。「この大会のように自分のゴルフを貫いて、結果につなげたいと思います」。秋にはプロになった越田が見られそうだ。
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