昨年大会、プレーオフで負けた雪辱を晴らす形になった近賀博子だが、当の本人にはそんな気持ちは微塵もない。
それは相手が近賀にとってアマチュアゴルファーとして尊敬すべき三木逸子だったからだ。去年の戦いをきっかけに、親交を深めた2人は、この日の最終ラウンドの同じ組み合わせを喜んだ。近賀にとって三木はレジェンドであり、超えるとか勝ちたいといった域を脱した存在なのだ。その三木とのラウンドが近賀に優勝を呼び込む要因になったのかもしれない。
三木を含め、同組にはいつも一緒に戦っている仲間と一緒だったこともあり、終始和やかな雰囲気でプレーしていた近賀。優勝という結果に素直に喜びを表現した。
「率直に嬉しいですし、お世話になったいろんな人にまずは報告したいです」。
近賀の言う”お世話になった人”の中に、ゴルフの楽しさを教えてくれた師匠と呼ぶ恩人がいる。その恩人からは、叱咤激励されることが多く、いつも見守り続けてくれていたという。その師匠からよく言われてきたことが「弱さ」に関することだ。
「たとえばコースが難しいとか、相性が悪かったとか、グリーンが速かったとか、ついつい何かのせいにしてしまうんですが、そう言うところが弱さだと指摘されるんです。愚痴を言う部分に自分の弱さがあると、自分なりに理解して、それを意識するようになってからは、いいゴルフができているように思います」。
この日の近賀は前半の9ホールを2バーディ・ノーボギーでラウンド。前半の貯金が気持ち的に余裕を生み、そのまま逃げ切る形となった。混戦が予想された中で、盤石のゴルフを見せた近賀。そんな彼女が目指すゴルファー像がある。
「人から強いと思われるよりも、上手いと思われるゴルファーになりたいんです」。
そう話す表情から、心からゴルフが好きで、ゴルフを楽しんでいることが理解できた。
50歳を過ぎてから心技体が充実するようになったと言うが、偉大な先輩・三木を追いかけるゴルフ人生はここからがスタートだ。
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