第3日最終組の3選手がスコアを伸ばし合った。その中でボギーを先行させたのが寺岡沙弥香だった。3番パー4でグリーンをとらえられず、アプローチも寄せきれず…という悪い流れだったのだが、ダメージを受けている様子は、まったく見られなかった。ボギーパットを沈めた直後の寺岡の頭の中に浮かんでいたことを話してもらうと、こんな言葉が返ってきた。
「あのときですか?“6番でバーディが待っているから、まあいいか”って思っていました」
6番の前に4番パー4で7㍍を沈めてバウンスバックしたのだが、その後で迎えた6番ホール。寺岡は、本当にそれが決定事項であったかのように前日に続くバーディを奪った。
「
自分でも、なぜだかわからないんですけど、6番はバーディになると感じているんです」
予知能力?
「そんな、だいそれたものではないんですけど、中学生時代に友達とトランプの神経衰弱をして遊ぶとよくいわれました。“なんか不思議な能力があるんじゃないの?”って。カードが全て伏せられている状態で私がその上に両手をかざして移動させると“あ、これとこれだ!”って感じてトランプをひっくり返すと、本当に同じ札ということが、たびたびあったんです。3回続けたこともありました」
中学生時代に感じていたという、ある閃きが、6番ホールのバーディ奪取への確信につながっているのであろうか。ボギー先行にも落ち着いていられた理由は、やっぱり不思議だった。
続く7番で連続バーディ。インにターンしての10番パー5ホールでもさらにスコアを伸ばして通算8アンダーパーとして首位タイでのホールアウトとなった。こうなると、最終日の結果も気になる。優勝する自分の姿が鮮明に浮かんでいるのだろうか。
「いえ、さすがにそれはありません。確信ではなく願望です。ここまできたら、優勝したいです」
その理由は、プロテストに絡んでくる。寺岡は昨年6月、11月とコロナ禍で変則日程となったプロテストを2度受けている。結果はいずれも二次で落ちていた。「今年も受けます。プロになりたいので。日本女子アマに優勝するとプロテストは二次まで免除で、いきなりファイナルに挑戦できるという特典があるので、優勝で、その権利も獲得したいです」
このシステムになって、出場者の多くがプロテスト・ファイナルへの挑戦権をつかみたがるようになった。日本女子アマに生まれた新しい流れである。
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