「ようやくパッティングがはいるようになりました」と出利葉太一郎は、安堵と嬉しさを交えた表情で言った。この2ラウンドで課題だったパッティングが、この日は、面白いように決まっている。3番、5メートル。4番、1メートル。9番、3メートル。さらに後半も、12、13番、そして16番もバーディを奪って、この日、66のでホールアウトした。
出利葉のゴルフと体型、その考え方は、この1年の間に大きな変化をもたらせている。それもこれも、昨年の日本アマチュア選手権で2位を余儀なくされた悔しさからだった。その悔しさの気持ちを、どう対処できるかが課題なのだけれど、彼の分析と実行力は、ボジティブだった。
「確
かに、悔しかったです。でも、冷静に考えれば、最終日の悪天候も予想されていましたし、その前から天候が左右するという状態でしたから、僕が、3日目を終えた時点で首位にいられなかったことが、いちばんの敗因だと思っています。でも、中島(啓太)さんと一緒に戦えて、そのゴルフや立ち振舞いに憧れて、自分は、自分なりにもっと成長しようと思いました」と語っている。
「いろんな意味で、進化している実感はあります。肉体も、しっかりとトレーナーさんと話し合いながら、まず怪我をしない身体。可動域。試合前のアップとその後のダウン。それに栄養バランス。コンディショニングなど、そこからしっかりと地固めするようになりましたし、ゴルフも今年のスイングは、それなりに自信があります」
出利葉は「調子がいい、調子が悪い」という考えを持ちたくないという。「前は、目先で一喜一憂していたり、調子が……という言い訳というか、逃げのせいにしていましたけど、それって意味ないというか、おかしな話じゃないですか。常に、自分はこういうゴルフなんだ、とはっきりと言えるゴルファーになりたいですし、試合では、万全のコンディションで臨めるのが競技者だと思うので」と言う。
出利葉は、進化している。自分のゴルフが確立してきていると思えるという。進化がその場に留まらないから、もっと前へ前へといけるエネルギーをもたらしているのだろう。
「アグレッシブなゴルフというのが、わかりかけてきた」という。それは無謀な攻めではなく、しっかりと根拠がある攻める勇気とは、全く別だとも理解できたと付け加えた。よく昔から、猪突猛進、勇猛果敢ということばがあるけれど、真の勇気とは、しっかりと状況を判断し、周囲を見回して、自分が、どうすれば活路を見いだせるかを理性を持って実行することが、真の勇気だと、新渡戸稲造は「武士道」の中で書いている。出利葉は、それを見出したのだろう。
首位の古川龍之介とは6打差離れて最終日を迎える。出利葉は、その6打差を追って、どんな勇気をもって18ホールズを攻めきるのか、楽しみだ。
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