10番ティーイングエリアで最終組のハーフターンを見届けようとカメラを構えていると、朝、独走状態でスタートしていった豊島豊が「試合を面白くしていますよ」と一言。
それもそのはず、スタート前まで後続に8打差あったアドバンテージは9ホールを終えて2打まで縮み、圧勝ムードと予想されていた雰囲気はどこへやら、接戦の模様をきたしていた。
豊島は1番ホールを危なげなくパーでスタートし、2番、3番もパー。「今日はグリーンのコンディションやピンの位置的にも無理に攻める必要はなかったのですが・・・」難易度が高く、ボギーで良しと考えていたパー4の4番ホール。3打目で入れたバンカーから1度で出すことが出来ず、
5打目で出して2パット、想定外のトリプルボギーを叩いた。同組でプレーしていた稲葉はそのホールで絶妙なバーディパットを決め、差は一気に4打に。7番でもボギーを叩き、稲葉がスコアを伸ばしていたこともあり、彼我の差は1ストロークまで縮んだ。9番で稲葉がボギーを打ったため、前述した通り2打差となったが、いつもクールな表情を見せる豊島の顔には明らかに焦りが見えていた。
「自分で自分を奮い立たせるじゃないですけど、ここからゲーム始まるなと。後半冷静になって切り替えられたのが良かったです」と昨日に続いてハーフターンで気持ちをリセット。13番で今日初めてのバーディを奪うと、16番でボギーを叩いた以外は終始安定したプレーを披露。豊島を追う稲葉の勢いも落ち、終わってみれば2位の髙橋に4打差をつけて連覇を決めた。
「ホッとしています」。優勝を決めて発した言葉は心の底からでた素直な気持ちだろう。
昨日までのスコアを考えれば圧勝とはならなかったが、史上初となる本選手権4度目の制覇。「学生の時は上手くなかったのでこの記録は信じられないですね。年齢を重ねて勝てるのは嬉しい」と前人未到の記録達成に思わず顔がほころぶ。
本選手権は2015年大会から出場資格が30歳以上から25歳以上に引き下げられ、大学卒業後に間を置かずに出場することができるようになり、体力的に勢いのある若手の選手が増えてきた。「ミッドアマも5年前に比べると若い選手が増えていますよね、今年も若い選手が増えた。だから今のうちに勝っておかないと」その2015年大会で本選手権初優勝を果たした豊島のこの言葉は、半分は本音だが、半分は冗談だろう。次なる目標は今年行けなかった全米ミッドアマへの出場。飽くなき向上心と探求心を常に持っている豊島は、今後もミッドアマの絶対王者として若き挑戦者たちを跳ね返していくだろう。
下関は、古来より日本の歴史における様々な出来事に関係してきた都市である。
2022年11月18日は、日本アマチュアゴルフ界の歴史においても重要な記録が生まれた場所となった。
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