通算12アンダーパーで首位でスタートした飯島早織は最終ラウンドもひとつスコアを伸ばしてのホールアウトだった。最終18番ホールをパーにおさめて3日間通算13アンダーパー。ガッツポーズこそとらなかったが、飯島は優勝したつもりでいた。
グリーンを離れようとしたとき、何か違和感を覚える雰囲気があった。誰からも「おめでとう」の声か掛からなかった。
「えっ」と思った後には、頭の中にいくつもの“?”マークが並んだ。誰かがもっといいスコアで上がっていたのか。初めてそのことに思いが向かった。
実は、1組前でラウンドを終えていた中村心が第3ラウンドに9バーディ・ノーボギーの爆発的なスコアを叩き出し、
実にスタート時の通算8アンダーパーから通算17アンダーパーにまでスコアを伸ばしてホールアウトしていたのだ。
飯島は途中経過も知らずにいた。日本女子オープンでは速報版があり、日本女子アマチュアゴルフ選手権では最終ラウンドにはキャリング係が同行していて、試合の流れ、自分のポジションを確認できる。日本ジュニアではキャリングも、スコアボードもない。
だから飯島は、最終組の選手たちのスコアにばかり意識を集めていた。その最終組では脅かされるようなスコアを出していく選手はいなかった。そのため、ラウンド終盤になって16番(パー3)でペナルティーエリアに打ち込みダブルボギーを叩いても、17番で第2打を引っ掛けてボギーを喫しても、動揺することはなかった。そして、18番ホールをパーにおさめたことで優勝できたと、大きな手応えをつかんでいたのだった。
「自分のプレー、自分たちの組にばかり気を向けてしまって、油断してしまいました。でも、まさか最終ラウンドに9アンダーパーのスコアを出す選手がいるなんて考えてもいませんでしたから、悔しさよりも驚きの方が大きかったです。で、本当に今となっては…なんですけど、途中で並ばれたとか、追い越されたことを知っていたら、自分がどういうゴルフをしたかを考えてしまいます。大量リードすると、攻めるゴルフを続けるのか、安全策を優先させていくのか、よくわからなくなります。追う立場であれば、やることは決まってしまうんですけどね」
日本女子アマチュアゴルフ選手権に続いての日本ジュニアの同年両大会制覇を逃した飯島は「終わってみれば、最終ラウンドの反省ばかりが残る試合になってしまいました」と虚ろな目になって振り返った。
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