埼玉県入間市の狭山ゴルフ・クラブが舞台となった「2016年度(第81回)日本オープンゴルフ選手権」。プロ転向後初の本選手権出場となる松山英樹が初の日本タイトル奪取を果たした本選手権は、秋晴れの中、4日間で45,000人を超えるギャラリーが訪れ、大きな盛り上がりを見せました。この年の男女ツアー最多ギャラリー数となった本選手権を前後編の2回に渡ってお届けします。前篇は、USPGAツアーで活躍する松山英樹、アダム・スコット、石川遼が同組でプレーした第1・第2ラウンドの模様を振り返ります。
秋晴れの中、開幕した2016年度(第81回)日本オープンゴルフ選手権。
日本男子プロゴルフで史上初のルーキー賞金王を獲得し、翌年から主戦場をUSPGAツアーに移して同ツアー2勝を飾っている松山英樹がプロ転向後初めて日本オープンに出場。2013年マスターズを制し、この年3年連続3度目の本選手権出場のアダム・スコット、日本ゴルフツアー史上最年少賞金王など数々の国内記録を塗り替えてきた石川遼の3人が初めて顔を揃えた。
競技当週の火曜日正午に発表される第1・第2ラウンドの組合せだが、この年は、ゴルフファンの期待に応え1週間前に松山、アダム、石川の3人が同じ組で2日間プレーすることが発表された。
そして迎えた第1ラウンド。会場には世界を舞台に戦う3選手の姿を一目見ようと、第1ラウンドで最多となる10,838人のギャラリーが狭山ゴルフ・クラブに訪れ、そのプレー、一挙手一投足に熱い視線を送った。熱気高まる中での3人のプレーだったが、第1ラウンドは松山が2バーディ・3ボギーの1オーバーパーで首位と5打差の15位タイにつけたものの、体の不調に苦しんでいる石川が5ボギーの61位タイ、アダムも6ボギーの75位タイと両者1つもバーディを奪えず、思わぬ出遅れとなってしまった。
その中で、単独首位に立ったのは、堅実なプレーを持ち味とする韓国出身のH・W・リュー。ことごとくフェアウェイをヒットする正確なショットと、「周りの喧騒は気にならなかった」という集中力で、4バーディ・ノーボギーの完璧なプレーで矢野東に1打差をつけた。
この日、注目を集めたのは、アマチュア予選会のドリームステージから本選出場を果たしたアマチュアの中島啓太。高校1年の中島は、2015年の第100回日本アマチュアゴルフ選手権で決勝に進出。ともに史上最年少優勝記録更新がかかった金谷拓実との戦いには敗れたが、中学生とは思えないショット力と冷静なプレーが印象的だった。中島は、将来の日本ゴルフ界を担う逸材としての期待に応えるプレーで、3バーディ・2ボギーの1アンダーパーでホールアウト。
連覇を狙う小平智、谷原秀人、日本アマチュアゴルフ選手権歴代優勝者の一人大堀裕次郎とともに、首位と3打差の4位タイと好スタートを切った。
第2ラウンド。単独首位のH・W・リューが第1ラウンドとは一転、13番でバーディを先行させたのも束の間、14番ボギー、15番ではダブルボギーを叩くなど前半で2つスコアを落とすと、後半も連続ボギーの後にチップイン・イーグルと波乱万丈の1日で2つスコアを落としてホールアウト。
その間隙を縫って、ベストスコアタイの67をマークした李京勲が通算2アンダーパーで韓国勢2人が首位に並ぶと、1打差に豪打が魅力のC.キム、矢野東、さらに1打差の5位タイに3度目の日本オープン戴冠を狙う片山晋呉、小平、藤本佳則が続き、首位争いは一気に混戦模様の色を帯びてきた。
そして、この日も9,500人を超えるギャラリーの視線を集めたのは、松山、アダム、石川の組だった。しかし、アダム・スコットの調子が上がってこない。出遅れを取り戻そうとスタートの10番から8メートルのバーディ、距離の短い13番(パー4)では1オンを狙ったティーショットがバンカーに捕まったものの、下り傾斜を読み切ってチップイン・イーグルを奪取。上位争いに顔をのぞかせたのもつかの間、14番のボギーで流れを失い、17番(パー5)では痛恨のダブルボギー。1番からは3連続ボギーを喫するなど。終わってみれば、この日4つスコアを落として通算10オーバーパーでフィニッシュ。カットラインに2打及ばず、3度目の出場で初めて後半のラウンド進出を逃してしまった。
アダムの失速でギャラリーの溜息がこぼれる中、松山と石川は奮闘を見せる。石川は前半1バーディと足踏みしたが、後半4バーディ・2バーディとスコアを伸ばし、通算2オーバーパーで14位タイに浮上。松山もティーショットとパッティングに不満を持ちながら、前半を1オーバーパー、後半も3番でボギーが先行する苦しい流れの中、4番でバンスバックを決めると最終ホールもバーディで締め、この日パープレーで踏みとどまり、通算1オーバーパーで首位と3打差の8位タイに順位を上げ、翌日のムービングデーを迎える。
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