第3回アジアパシフィック女子アマチュア選手権」が、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに位置するAbu Dhabi Golf Club (パー72、6499ヤード)にて、11月10日~13日に開催された。
初出場の橋本美月が、アジア太平洋の強豪との戦いを制し、見事に優勝を飾った。2022年に開催予定のオーガスタナショナル女子アマチュア選手権、アムンディエビアン選手権、全英女子オープン選手権、ハナファイナンシャルグループ選手権への出場権を獲得し、一気に国際舞台への階段を駆け上がった。
橋本は、3日間連続で4アンダーを出し、首位のVongtaveelap Natthakritta(タイランド)と3打差の単独2位から最終日をスタートした。
Vongtaveelapは、得意の飛距離を活かし、2番ホールのパー5にて早速バーディを奪い差を広げた。しかし、橋本は3番ホールのパー4で、100ヤード前後のアプローチを見事にカップへ沈めイーグル。続くパー3でもバーディを獲り、前半からVongtaveelapにまるでマッチプレーのようにプレッシャーをかけた。ここに同組でプレーするBennet Kelsey(オーストラリア)が、4番から13番でバーディを5つ奪う猛チャージを見せ、リードしている橋本に1打差と忍び寄る。
3者譲らずに緊張感の高まる中、橋本が1打リードして迎えた右ドッグレックの最終ホールのパー5。まず橋本が3Wを打ち、左のバンカーへ。続くBennetはドライバーを振り抜きフェアウェイをキープ。そして、Vongataveelapも2オンを狙いドライバーを振り抜いたが右のウォーターハザードへ打ち込んだ。
橋本は、バンカー内の右足上がりの難しいライからユーティリティを打ち、左のラフへ。そこから3打目をピンの右およそ5mにつけた。続くBennetは2打目をグリーン左手前に大きく外し、3打目も寄せきれず戦線離脱。飛距離のあるVongtaveelapはウォーターハザード脇にドロップしてからの3打目をバーディチャンスにつけることは出来ず、橋本が2パットで優勝という状態になった。
橋本にとって初出場、そしてアジア太平洋地域の女子アマチュア選手にとって最大級のこの大会。パットを打つ前に、大きく深呼吸をしながらタオルで顔を拭った。日本代表のチームメイトが、祝福の準備をしながら見守る中、打ったパットは、およそ50cmショートした。普段であれば何でも無い短いパットだが、優勝を決めるパット。その1打が切り開く世界への道が一瞬見えたのかもしれない。「緊張で手が震えた」と振り返る橋本。無事にウィニングパットを沈め小さくガッツポーズをした。仲間に祝福されると緊張から解き放たれ歓喜の涙を流した。
2018年にタイで開催された第1回大会にて、タイ人のAtthayaThitikulが優勝。2019年に日本で開催された大会では安田祐香が優勝。そして初のUAE開催となった今回、橋本が優勝。日本人選手が連覇を飾り、強さを見せつけた。
橋本とともに戦った仲間たちも、それぞれのゴルフと向き合い全力で戦った。
稲垣那奈子は、トータル13アンダーの単独5位。後半、最終ホールを含み3つバーディを取り上位フィニッシュとなった。
最終日の4番ホールのパー3にて試合では初のホールインワンを達成した手塚彩馨は、トータル5アンダーの16位タイとなった。
上田澪空が、トータル2アンダーの28位タイ。木内真衣は、トータル1オーバーの37位。長野未祈は、トータル2オーバーの38位タイにて大会を終えた。
日本のゴルフにとって、2021年は実りの多い1年となった。オーガスタナショナル女子アマチュア選手権では、JGAナショナルチームの梶谷翼が優勝。翌週には、過去にアジアアマを2連覇した松山英樹が、悲願のマスターズ制覇。1年延期となった東京五輪では、稲見萌寧が日本ゴルフへ初の銀メダルをもたらした。そして、先週ドバイにて開催されたアジアアマにてJGAナショナルチームのエースである中島啓太が優勝。今週には、橋本が新たなヒロインとなった。
日本ゴルフ協会が、改革をしてきた若手選手の育成強化プログラム。2015年にはオーストラリア人ゴルフコーチのガレス・ジョーンズをヘッドコーチへと招聘し、コーチやスポーツ医科学スタッフにも国際色豊かな顔ぶれを揃え、ワールドスタンダードの情報を若手有望選手へと届け続けてきた。その中で、JGAナショナルチームに所属する選手だけでなく、その周で活動する高校生や大学生にも、JGAと地区ゴルフ連盟が連携する発掘育成事業を、また学校の部活動のチームメイトを通して、その変化は伝わっていたのであろう。
今回のアジアパシフィック女子アマでは、全員が初出場で、JGAナショナルチームメンバーは0名。国際経験が豊かとは言えない選手たちだったが、初めて訪れるUAEの環境に順応し、アジアパシフィックの選手たちと英語でコミュニケーションをとり新たな友人を作り、堂々と日本代表としての振る舞いを見せた。今後のさらなる飛躍に期待したい。
新型コロナの影響のため、次回開催は未定。
関連ウェブサイト
大会公式サイトは、こちら
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大会期間中の日本代表選手の活動はJGA公式フェイスブックよりご確認いただけます。
JGA公式フェイスブックは、こちら
◆日本代表選手最終順位◆
優勝 16アンダー :橋本 美月(東北福祉大学 1年 / 114位)
5位 13アンダー :稲垣 那奈子(早稲田大学3年 / 129位)
16位タイ 5アンダー :手塚 彩馨(佐久長聖高等学校 1年 / 23位)
28位タイ 2アンダー :上田 澪空(共立女子第二高等学校 1年 / 1111位)
37位 1オーバー :木内 真衣(東北福祉大学 3年 / 1296位)
38位タイ 2オーバー :長野 未祈(セミノール州立大学3年 / 76位)
※名前(所属大学と学年/現時点での世界アマチュアゴルフランキング)
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