2022年度のJGA主催競技もすべて終了し、いわゆるオフシーズンに入りますが、レフェリー達にとってオフシーズンは次のシーズンへの準備期間となります。レフェリーは復習、技術の改善、新しい知識の習得、入念な準備を繰り返してこそ技術が向上していきます。そのため、JGAオープンレフェリーではシーズンを通じて行ったルーリングを分析しています。
JGAオープンレフェリーは2022年シーズンでは43競技を26名で担当し、315件のルーリングが報告されました。ルーリングの多かった規則を簡単にご紹介いたします。
ルーリング数1位 99件
最もルーリングが多かったのは規則16.1「異常なコース状態からの罰なしの救済」に関するものです。とくに、カート道路やマンホールなど動かせない障害物からの救済のためにレフェリーが呼ばれました。このルーリングは一般のプレーヤーにとってもコースで最も遭遇する救済処置の一つです。
完全な救済のニヤレストポイントを決定し、1クラブレングスの救済エリアにドロップするという基本的な規則ではありますが、障害の形状、プレーヤーの意図、障害物以外の状況(例えば、近くに木がある、OBがあるなど)によって、この規則の処置は難しくなることが多く、あまりルーズに処置をすると誤所からのプレーとなってしまうおそれがあります。
1打を競う競技ゴルファーにとっては、基本的な処置ではあるものの、確実に処置を完了させるためにレフェリーに確認したいのです。
ルーリング数2位 63件
次にルーリングが多かったのは規則17.1「ペナルティーエリアからの罰あり救済」に関するものです。球がペナルティーエリアに入った場合、1罰打でプレーヤーには救済の選択肢が与えられています。このルーリングも一般のゴルファーにとってよく使う基本的な規則を適用するものですが、まず問題となるのは球がペナルティーエリアの中に本当に入ったのかどうかの決定です。
ペナルティーエリアからの罰あり救済を受けるためには、球がペナルティーエリアに入ったことが事実上確実であるという強い証拠が必要です。プレーした球の行方が分からず、もしかしたらペナルティーエリアに入っているかも知れないという状況で事実上確実という証拠が成立するかをレフェリーに確認するプレーヤーが多いです。そして、事実上確実という証拠があれば、その証拠に基づいて球が最後にペナルティーエリアの縁を横切った地点を推定して救済の基点を決めます。
ルーリング数3位 26件
3番目に多かったルーリングは規則18.2「紛失、アウトオブバウンズ」に関するものです。球が見つからない場合、プレーヤーは3分間捜索することが認められています。プレーヤーが球を捜索する場面に遭遇したらレフェリーは時間を計測しながら球の捜索を手伝います。
ほとんどの場合、プレーヤーは球の捜索する時間を自分の時計では計測していませんから、レフェリーがプレーヤーやキャディー、捜索を手伝っているプレーヤーに「どれぐらいの時間捜していますか?」と聞きます。プレーヤー達が「約1分ぐらいだと思います」と回答すれば、レフェリーは「それではこれから私の時計であと2分を計測します」と捜索時間を管理します。
また、歩いてラウンドをしなければならない競技においても、紛失やアウトオブバウンズとなり元の箇所に戻ってプレーするプレーヤーを全体のプレーのペースのためにレフェリーがカートで送ることもよくあります。
日本オープンなどトッププレーヤーがプレーする大規模な競技であっても、余暇として楽しむゴルフゲームであってもコース上で起きるルーリングはほぼ同じです。ゴルフ規則が難しくて苦手なプレーヤーも、この3つの規則だけは知っておくことをお勧めいたします。
JGAオープンレフェリー
チーフルールズディレクター市村
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