2001 JUNE vol.66

 サンドウェッジを発明したのはジーン・サラゼンと伝えられているが、実際にサンドウェッジをこの世に誕生させたのは、彼の盟友であるウォルター・ヘーゲンなのであった。

 話は1930年に遡る。ブナの木をヘッド素材に、ヒッコリーをシャフトに使用した、ロフト角55度の大型フェース搭載のサンドクラブ、通称「サンディー・アンディー」が2人の男の手によって造り出された。1人は後にアルミ製のロングアイアンを造るベカリー・ロルストン。そしてもう1人が何を隠そう、ヘーゲンなのだ。このサンドクラブは極端な凹面フェースを採用し、今日のルールには適合しないが、バンカーや深いラフを克服する武器として画期的だった。1931年、凹面禁止のルールが生まれ、完成からわずか1年でこのウェッジは発売中止へと追い込まれる。しかし2人は、アルミ製ヘッドによるサンディー・アンディーを考案する。

 一方、1929年開催の全英オープン覇者であるボビー・ジョーンズは、エドウィン・マックレーンが造った凹面サンドウェッジ(1929年)の助けを借り、優勝をたぐり寄せた。このクラブは話題となったが、ヘーゲンのサンドクラブ同様、ルールにより使用禁止となる。しかし、ヘーゲンの盟友であるジーン・サラゼンはこの話題のクラブをある人物から借り受け、自宅裏のコースのバンカーで試打を繰り返す。そこで、ソールにはバンス角が必要であると考え、ソールに鉛を貼った。つまり、サンドウェッジの特徴であるバンスソールこそ、サラゼンの発明だったのだ。

 ロフトがあり、重いバンスのあるサンドウェッジの出現は、プレースタイルにおける著しい変化を生んだ。特に、外国の選手に比べて飛距離のハンディが否めない日本人ゴルファーは、サンドウェッジの技術を磨き、完璧なアプローチを体得し、彼らとの距離を詰めていったといっても過言ではない。日本人にとって文字通り救世主と呼べる一本なのである。

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